競争は「安さ」から「品質」に? 「事業許可更新制」が改革の柱
トラックドライバーの労働環境に関する問題としては長時間労働などの働き方に注目されることが多いが、近年カスタマーハラスメント(カスハラ)も増えているという。荷主と一般消費者の双方がカスタマー(顧客)となる運送業は、荷主からは過剰な要求をされ、消費者からは不当な言いがかりを受けかねない立場だ。
ドライバーの精神的な被害を防ぐのは人材の定着に向けて重要な取り組みで、全ト協はカスハラの実態把握や採るべき対策などの取りまとめを行なうことにしている。
人材確保に関しては2024年に「自動車運送業」が「特定技能」制度の対象に加えられ外国人ドライバーの採用が可能になった。ドライバー不足解消の一助として期待されるが、受け入れ人数は5年間で2万4500人という見込みで、引き続き国内人材を確保するための取り組みも重要となる。
また、ドライバーの業務を効率化するため、全ト協は倉庫や配送センター等の作業員についても外国人特定技能制度へ追加することを要望している。
いっぽう、全ト協が業界改革の柱として導入を目指しているのが「事業許可更新制」だ。
トラック運送事業者同士が、これまでのように運賃・料金の安さで勝負していては、ドライバーの賃上げと労働環境改善には繋がらず、決してドライバーのためにはならない。
事業者が「物流品質」で勝負することが適正な競争であって、そうでなければドライバーの地位向上も、労働条件の改善も、経営の効率化も、安定した輸送力の確保もできない。
そもそも、普通は利益を出せないダンピング価格で仕事を受ける事業者は、過積載などの違法行為により利益を捻出しているわけで、安さだけの競争は消費者にとっても不健全な環境だ。
全ト協は業界内の適正な競争と健全な発展のために、貨物自動車運送事業法の改正とそれを担保する特別措置法(新法)の成立を目指すとしており、その具体的な内容が運送業における事業許可の更新制となる。
消費者の立場としても、2025年こそ悪質な事業者を排除し、トラックドライバーが誇りをもって働ける環境の整備を進めてほしいものだ。
【画像ギャラリー】2025年も課題が山積するトラック業界(5枚)画像ギャラリー