2025年はトラック業界にとってどんな年になるのだろうか?
全日本トラック協会の坂本会長は年頭所感で、2024年以降も継続する「2024年問題」や、「多重下請構造」と「荷主対策」、そしてトラック運送業界改革の柱として導入を目指している「事業許可更新制」などに言及している。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
「2024年問題」は2030年に繋がる由々しき問題
公益社団法人 全日本トラック協会(全ト協)の坂本克己会長は、新年恒例となっている年頭所感を発表した。年頭所感は「新年のご挨拶」として機関紙「広報とらっく」の1月1・10日号などでも公開されている。
2024年は、物流の「2024年問題」が社会課題として広く認知された年だった。改めて整理すると、2024年度よりトラックドライバーに働き方改革関連法が適用され、従来通りの働き方では国内の輸送力が不足し、貨物が運べなくなるという問題だ。
ドライバーの高齢化や新規就労者の減少などで物流の担い手不足が深刻化しているが、こうした事態は2025年以降もますます厳しくなると予想される。年頭所感において坂本会長は、2024年問題は「2030年に繋がる由々しき問題」とした。
その「2030年」は、政府の物流革新に向けた中長期計画(物流の効率化、商慣行の見直し、荷主・消費者の行動変容などが柱となっている)が念頭にある。
2024年問題は2024年を乗り切って終わりではなく、構造的な課題として継続的に対応していくことが必要な、いわば「2030年問題」でもある。ドライバーの処遇改善と担い手確保のため、エッセンシャルワーカーとしてのトラックドライバーに注目が集まった2024年を「物流革新元年」として行かなければならない。
荷主への周知・浸透に課題
燃料価格の高騰に対しては、国交省が告示する「標準的な運賃」に燃料サーチャージ制度を盛り込むなど、輸送コストの上昇分を運賃に転嫁する仕組み自体はできている。
今後は荷主への周知・浸透を図ることが課題となっており、2024年11月に体制が拡充されたトラック・物流Gメン(「トラックGメン」から改称)による是正指導など、実際に適正な運賃を収受できる環境整備が進められそうだ。
トラックGメンは、荷主の悪質な行為を監視するため国交省に発足した組織で、体制拡充で各都道府県トラック協会の「Gメン調査員」が追加された。今後は情報提供に対する報復措置の禁止など、関係当局と連携を図りつつ、より強い権限を持って荷主対策の実効性を高めて行くという。
いっぽうでトラック業界特有の「多重下請け」も、実運送を行なう運送会社が適切な運賃を収受できない構造的な要因となっており、ドライバーがせめて全産業平均並みの賃金を受け取れるように、全ト協としても是正に向けた提言を行なっている。
また、適正取引についてはこれまで独占禁止法の「物流特殊指定」で対応されてきたが、全ト協は「下請法」の改正を目指しており、実現すればより機動的な対応が可能になる。
気がかりなのは事業用トラックが第一当事者(加害者)になる死亡事故件数が増加傾向にあることだ。「安全」は運送事業者の最優先課題であり、社会的使命として安全運行の徹底に努めなければならない。