ボルボグループは2023年8月31日、人間のドライバーを乗せない完全無人の大型トラックによる商用輸送をノルウェーの鉱山で開始した。ボルボの自動運転部門が車両・インフラ・ソフトウェアなどを含む無人運転ソリューションを鉱山会社に提供する形だ。
実証実験などでは自動運転車両にも安全のためのドライバー(セーフティ・ドライバー)が乗務することが多いが、ドライバー不在の商用輸送は、システムを開発したメーカーが安全に対する責任を負う。その意味では技術的なブレイクスルーにとどまらず、新しいビジネスモデルの登場でもある。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/AB Volvo・Volvo Autonomous Solutions
セーフティ・ドライバー不在の商用輸送
ボルボグループの自動運転部門であるボルボ・オートノマス・ソリューションズ(V.A.S.)は、ノルウェーのヴェルフィヨルドにあるブレンネイ・カルク鉱山における商用輸送で、この業界で初めてとなるマイルストーンを達成した。
セーフティ・ドライバー(安全のために自動運転トラックに乗務するドライバー)が不在の無人トラックによる商用輸送に成功したのだ。
今回の自動運転ソリューションは同鉱山のために開発されたもので、完全無人運転に対応した7台のボルボFH大型トラックと、V.A.S.が社内で開発した仮想ドライバー(自動運転システム)によって、実際に石灰石の輸送を行なっている。なお、同鉱山はV.A.S.が設立される前からボルボと提携し、自動運転の実験を行なってきた場所だ。
鉱山でのトラックの運行は厳しい条件が多い。急な坂道や厳しい気象、暗く狭いトンネルを超えて、無人のトラックが石灰石を鉱山から破砕機まで輸送する。
V.A.S.社長のニルス・イエーガー氏は次のようにコメントしている。
「私たちが長く思い描いていたビジョンがついに現実になりました。世界で最も過酷な環境で行なわれている実際の商用輸送の現場で、セーフティ・ドライバーが不要になったことは、この業界にとって飛躍的な前進です。
このマイルストーンは、自動運転分野における弊社の基盤となります。鉱業・採石業の未来は、より安全で効率的なものとなるでしょう」。
また、ブレンネイ・カルク鉱山のマネージング・ディレクターを務めるレイモンド・ラングフィヨルド氏のコメントは次の通りだ。
「これは私たちにとっては大きな一歩です。鉱山開発に自動運転トラックを導入する理由はいくつもありますが、特に大きいのは安全性、効率性、柔軟性です。
ただし、こうした利点を真の意味で享受するには、自動運転トラックへのセーフティ・ドライバーの搭乗が不要となる必要がありました。厳しい業界ですが、このソリューションにより私たちの競争力はさらに高まりました」。
人間が乗っていないトラックが荷物を運ぶのは、自動運転技術の進展を象徴する側面もあるが、より実際的には万一の際(つまり事故が起きた場合)に、責任の所在がシステムを開発したメーカーに移るという側面もある。その意味では、無人ソリューションの商用化は輸送の安全に対するメーカーの覚悟を示すものでもある。