消費者庁は「送料無料」表示の見直しに向けた方針をとりまとめた。こうした表示は禁止しないが、追加負担を求めない旨を表示する場合、無料となる理由やその仕組みなどをわかりやすく説明するよう、表示者が責任を負うとした。
物流の担い手不足から輸送力が足りなくなる「2024年問題」が間近に迫り、消費者も物流に対する認識を改め、行動を変えて行くことが求められている。同庁としては「送料無料」表示の見直しをきっかけに消費者の行動変容につなげたい考えだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真・画像/消費者庁・全日本トラック協会・フルロード編集部
「送料無料」表示を見直しへ
「送料無料」表示の見直しに取り組んでいる消費者庁は、「物流の2024年問題」を踏まえて送料無料表示に関する同庁の考え方をとりまとめ、2023年12月19日に発表した。
表示例として「送料当社負担」や「〇〇円(送料込み)」といった例を挙げたほか、「送料無料」という表示も禁止はしない。
ただし「無料」などと表示する場合、表示者はその表示についての説明責任を負うとしており、配送業者に適正な運賃を支払っていることや、誰が送料を負担しているかなどわかりやすく説明する必要があるとした。
消費者庁は今年6月から11月まで9回に渡って送料無料表示の見直しに向けた検討会を開催しており、全日本トラック協会(全ト協)や日本通信販売協会などの関係団体、ヤマト運輸・佐川急便などの事業者、消費者団体などの意見を踏まえ同庁としての方針をまとめた。
その背景にあるのが物流の2024年問題だ。政府の働き方改革関連法により2024年4月よりトラックドライバーなど自動車運転業務の時間外労働の上限規制が始まり、輸送力不足により荷物が運べなくなるかもしれない、というのが2024年問題だ。
何も対策を講じなければ2024年度に14%、2030年度には34%の輸送力不足に陥る可能性があるとされている。
政府は6月に「物流革新に向けた政策パッケージ」をとりまとめており、そのなかで「運賃・料金が消費者向けの送料に適正に転嫁・反映されるべきという観点から、『送料無料』表示の見直しに取り組む」こととされた。
仮にこうした表示を法律によって禁止したとしても実際に得られる効果は限定的だが、「送料無料」という表示が消費者の認識に与える影響は大きい。見直しを推奨することで消費者の理解を促進し、意識改革・行動変容につなげたいというのが消費者庁の考えだ。