ヤマハがジャパンモビリティショーで発表したオープンの3輪BEV「TRICERA(トライセラ)」。トライセラには意のままに操る歓びに加えて、「鍛錬の娯楽化」というメッセージが込められているのだが、これって一体どういうことなのか!?
文/佐々木 亘、写真/佐々木 亘、日本自動車工業会
■後輪の同位相・逆位相で生まれる独自の旋回性
トライセラの開発コンセプトは「Urban Exciting Mobility~新信徒マシンがひとつの有機体となる~」だ。3輪であることに加え、3WSであることが、トライセラに特徴的な操縦感覚を生み出す。
ヤマハが得意とするオートバイ・ボート・バギーといった、操縦する楽しさを感じるモビリティの仲間に、トライセラが加わる。
世の中が自動運転に向かう中、ヤマハとしてもう一度乗り物を操縦する楽しさをゼロから問い直してみようという考えが、トライセラを生み出した。
トライセラの特徴的な部分は3輪すべてを操舵できるという点にある。基本的には後輪の操舵はGセンサーによって行われるのだが、操縦者がマニュアル操作をすることができるというのだ。
後輪の同位相・逆位相を手動操作することにより、旋回中心の移動を操作できる。これにより、今までのモビリティとは異なる操縦感覚が得られるというのだが、反面その操縦は非常に難しい。
なぜ難しい操縦性をトライセラに与えているのか。そこには、数多くの楽器も作り出す、ヤマハならではの考えがあった。
■鍛錬の娯楽化が感動を生み出す
ヤマハ発動機の竹野敦郎氏に、トライセラについて伺った。
竹野氏はトライセラの操縦に対し「慣れるまでは非常に難しい」と語る一方で、「非常に難しいのだが、コツを掴めば異次元の人機一体感と感動が生まれる」とも話す。
さらに竹野氏はこう続けた。
「操縦するのは難しいが、それを習得していって得られる楽しさがあると思うんです。例えば楽器も同じで、最初は音を鳴らすこともできないけれど、習得して練習して成長していく過程で、演奏することが楽しくなっていくでしょう。
これはモーターサイクルでも同じだと思っていて、新しいドライビングスキルの習得と成長が乗り物を操縦する楽しさにつながっているという風に考えています。」
この考え方を今、ヤマハでは「鍛錬の娯楽化」と呼ぶ。
難しいからこそ楽しく感動するというところが、まだまだ手動の乗り物にはたくさんあるだろう。
そこを深堀りすれば、新たな感動が生まれるというのが、ヤマハ発動機開発陣の、ひいてはヤマハのテーマなのだ。
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