それでも自動車産業は、日本経済の屋台骨だ
では、そのクルマ産業は日本経済にどれくらい貢献しているのか。自工会の資料をざっくりまとめると、次のようになる。
出荷額:72兆円(製造業全体の約2割)
雇用:560万人(全就業者の約1割)
輸出・外貨獲得:22兆円
設備投資・研究開発費:5.9兆円(製造業の約3割)
一方で、日本国内の自動車販売台数・生産台数はこの30年で大きく減っている。1990年と2024年を比べると、国内販売は778万台→442万台(約43%減)、国内生産も1349万台→823万台(約39%減)と、きれいな右肩下がりになっている。
つまり、税金は増えたり高止まりしつつ、国内市場そのものは縮小(可処分所得は落ち続け、自家用車の平均使用年数も伸び続けている)。日本市場は日本の自動車メーカーにとって非常に厳しいマーケットとなっており、それでもなお、日本の自動車メーカーは日本で生産・開発を続け、雇用を生み、日本経済の土台を支え続けている。
98.8%が「クルマの税金は負担」と回答 世界的に見てもトップクラスの重税
日本の自動車ユーザーに対する厳しい税負担は、ユーザーの肌感覚(いわゆる「痛税感」)にも現れている。JAFが自家用車ユーザー約15万人を対象に行ったアンケートでは、「クルマの税金に負担を感じる」が実に98.8%。内訳を見ても、「とても負担」が71.0%、「やや負担」が23.4%と、ほとんどの人が「重い」と答えている。
さらに、自工会の資料には主要国の車体課税の比較グラフも掲載されているが、日本はそこでもトップクラスの負担だ。ユーザーが負担している約9兆円は、国税収入の約7%に相当するとされ、クルマ好きだけでなく、仕事や生活の足としてクルマを使う人たちの財布を直撃している。
それでも「税金だから仕方ない」で済ませていいのだろうか。「これ以上クルマだけを【サイフ扱い】するのは、さすがにやりすぎじゃないか?」という話だ。
自工会が政府に提出した「自動車税制 3つのお願い」
我が国の自動車産業最大の業界団体である自工会は、日本政府に対し「重点要望」として以下3つを提案している。内容を噛み砕くと、こうなる。
提案①…ガソリン税の穴埋めに、クルマの税金を使わないで
ガソリン・軽油の暫定税率(上乗せ分)廃止は日本の自動車ユーザーが喜ぶだけでなく、物流全体のコストを軽減し、「物価高対策」に直接効く決定だった。だが、その穴埋めとして自動車の取得時や保有時の税金を上げる――つまり「右ポケットから左ポケットへ」的なやり方には、断固反対という立場だ。
提案②…「環境性能割」は単純廃止
車両価格にはすでに消費税10%がかかっている。そのうえで、「環境性能割」という名の上乗せ税を取るのは、どう考えても二重課税である。環境性能割はスパッとやめて、取得時の税金は一本化し、そのうえでガソリン車から電動車への買い替えを後押しすべき――という提案である。
提案③…保有税を『重量×環境性能』で一本化する
自動車税・軽自動車税・重量税とバラバラになっている保有段階の税金を、「クルマの重さ」と「環境性能」に応じて一本化しよう、というのが3つ目の提案。重量税に残っている暫定税率を廃止し、「重くて環境負荷が高いクルマは少し高く、軽くて環境性能の高いクルマは安く」という、シンプルで公平な仕組みにしたいという方向性だ。
要するに、自工会が言っているのは「取り方をわかりやすく公平に。そしてこれ以上、自動車ユーザーばかりを便利な財源扱いしないでくれ」ということだ。



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