「金の卵を産むガチョウの腹を割くな!!」高市政権が掲げる積極財政は危機に立つ日本の自動車産業を守れるか?

未来を削るな 研究開発税制の縮小は、日本のクルマづくりへの逆風だ

 そしてもうひとつ。いま自工会が特に懸念しているのが「研究開発費に対する法人税優遇税制の縮小」だ。

 いまやクルマは、エンジンやボディだけで勝負する時代ではない。ソフトウェアで機能をアップデートし続けるSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)、高度な自動運転・運転支援システム、世界中で同時に進む電動化……。どれも開発コストは年々ふくらみ、研究開発費はメーカーの「生命線」そのものになっている。

 そんな中で、政府内で検討されているのが「法人税から差し引ける研究開発費の枠を縮小して、別の財源に回す」という議論だ。これは世界的に見るととんでもない話で、いま世界各国では、減税や補助金で自動車関連の研究開発投資を呼び込もうとしている。そういう状況で日本が研究開発税制を縮小したら「海外で開発したほうが得ですよ」という逆方向のメッセージになりかねない。

 そもそもの話として「モビリティの研究開発費」というのは「世界で日本が勝てる貴重な領域で、さらに勝率を上げるための投資」であり、消えてなくなる無駄な資金ではなく、日本人研究者や日本法人に注入される「カンフル剤」であって、多くは日本市場に還流するし、自動車メーカーがすでに収めている多額の法人税・関連税をさらに積み増す可能性の高い資金。

「ここで勝負させずにどこで勝負するの……?」という話だ。

自動車関連税制は「いまの議論」が今後百年の日本自動車産業の命運を握る

 かねてから、令和8年度(2026年度)の税制改革では、自動車関連税制が大幅に見直される、と宣言されていた。自動車重量税や環境性能割、ガソリン税が「実情に合っていない」とされており、それらが抜本的に見直される。

 ではどう見直されるか、方向性がいま(2025年末)まさに問われている。

 2025年11月12日の参議院予算委員会で、国民民主党・榛葉賀津也幹事長の質問に答えて、片山さつき財務大臣は「角を矯めて牛を殺してはいけない」、「自国の基幹産業があってなんぼですから」と、歴代の財務大臣のコメントから一歩も二歩も踏み込んで、日本における自動車産業の重要性を確認した。

 高市早苗総理と片山財務相が推し進める「責任ある積極財政」なら、日本の自動車産業が立たされている「荒波」をよく理解したうえで、自動車にまつわる税制改正に臨んでくれる可能性は高い。

 いま、日本の自動車産業は岐路に立たされている。国内市場は縮み、ユーザーの負担は重く、研究開発への投資競争は激しさを増している。ここで税制まで逆方向に舵を切ってしまったら、じわじわと「気づいたら日本はクルマの先進国ではなくなっていた」という未来も、決して絵空事ではない。

 アメリカ、中国、欧州各国だけでなく、ASEAN諸国なども「自動車産業を応援しよう」と、税収向上や科学技術発展、国内産業保護のため、自国の自動車産業の発展を狙ってさまざまな政策を繰り出している。象徴的なのがアメリカであり、トランプ大統領が課した米国関税は、(日本政府の粘り強い交渉により一時期の25%からは軽減したものの、それでも)日本の自動車産業を直撃し、各社の経営を圧迫している。

 日本もアメリカや中国と同程度に、とまでは言わないが、もうちょっと自国の自動車産業を育てる方向へ進むべきではないか。「経済安全保障」ってそういうことでしょう。

 トヨタ、日産、ホンダ、スバル、三菱、マツダ、スズキ、ダイハツのエンジニアたちは、舞台が整って同じ環境で勝負させれば、BEVだろうが内燃機関だろうが、アメリカにも中国にも欧米諸国にも負けないクルマを作れる。

 難しい税の議論を専門家任せにするのではなく、クルマ好き一人ひとりが「どんな税制なら納得して払えるのか」、「どんな仕組みなら日本のメーカーの挑戦を後押しできるのか」を考えるきっかけになれば、と願っております。

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