■クルマの税金、来年からここが変わる
2021年12月31日に、自家用乗用車(普通自動車と軽自動車両方)の環境性能割の1%低減措置が期限を迎える。消費税が10%に増税になった2019年10月に、クルマの買い控えを防ぐために1年間に限って税率を軽減したものだが、新型コロナウイルス感染拡大による需要の落ち込みを補うため延長されていた。
EVや一部の超エコなクルマ以外の普通のクルマを買うときの税率が来年から1%増税となる。新車の場合は課税標準基準額が新車価格の90%程度だから、200万円のクルマを買うと1.8万円ほど税金(環境性能割)が上がることになる。
さてここからが本題の、2022年以降の自動車関連の税金の変更について。
世の中は変わっていくので、同じ税金の仕組みが長く続くと税金の負担が不公平になってしまう。また、政策手段として特定の分野の課税の仕組みを変えることによって、必要な分野に民間の投資資金を呼び込んだりする。逆も然り。そのため、税制の見直しが年に一度行われる。
具体的には、毎年各省庁から出される税制改正の要望を、与党自民・公明両党の税制調査会が取りまとめ、12月10日に「令和4年度税制改正大綱」として発表された。
今回は岸田政権発足後ということもあり、「成長と分配の好循環の実現」「経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し」をテーマにつくられた。
だが結論から言うと、「経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し」という掛け声とは裏腹に、100年に一度の大変革期にある自動車関連の税金の仕組み、特にクルマの保有に対する課税の仕組みは、大きな変革なく「2023年の4月30日のエコカー減税の終了期限までに見直す」と先送りにされた。
今回の変更点は、車検時に支払う自動車重量税をクレジットカードで支払うことが可能になることだけだ。
この与党税制改正大綱は、毎年12月20日ごろに閣議決定される。
そして2021年1月17日ごろ開会される通常国会にそれをもとに作成された税制改正法案が提出されて2月に衆議院もしくは参議院の財政金融委員会、もしくは総務委員会で審議が行われて本会議に回され、3月頃に衆参両院で改正法案が成立して、4月以降に制度改正が行われるのが通常の流れとなる。
そしてその先送りにされた見直しは、「令和3年度税制改正大綱で示した方針に基づく」とされる。簡単にまとめると「自動車業界が大変革期に対応できるか否かは、日本の経済・雇用を大きく左右しかねない重要な課題であり、自動車業界が環境変化に対応できるよう税制面でサポートしていくべき」ということになる。
高度成長期から50年以上続いてきた、時代遅れの自動車関連の税制の大枠が、ようやく2022年に大きく変わる可能性がある。逆に言うと、2022年に変わらなければポンコツなまま、あと数十年変わらない可能性だってある。
だが自民党税調会長として議論をリードしてきた元自民党幹事長の甘利明氏の影響力の低下もあり、自動車税制改革がうまくいく保証はない。
■補正予算では石油元売り各社の補助金やEV補助金の金額が決定
また、税金ではないが、12月20日に成立した令和3年度補正予算では、次のクルマ関連の補助金その他の法律が成立した。
・ガソリンの全国平均価格が170円以上となった場合に、ガソリン・軽油などにつき1リットルあたり5円の補助金、上限800億円を国から石油元売りに支払う(2022年3月末まで、支給開始後は170円から1ヵ月に1円ずつトリガーを引き上げ)
・クリーンエネルギー自動車購入費用への補助金支給と、充電・水素充填設備の導入への補助金(詳細未定)総額375億円
・ガソリンスタンドのデジタル化や配送効率化関連設備、地下タンク・配管などへの設備投資に対する補助金180億円
・バッテリーの国内生産・リサイクル技術導入のための設備・研究開発費用への補助金1000億円
・自動車などに使われる先端半導体の国内生産化への補助金6170億円とサプライチェーン上不可欠性の高い半導体生産設備の入替・増設費用への補助金470億円
クリーンエネルギー自動車への補助金は、EVが上限80万円、PHEVが上限50万円、FCVが上限250万円となっており、給電機能があるクルマは補助金が増額される。たとえば日産アリアでは600万円の車両本体価格に対し、80万円の補助金が出る見込み。
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