13年超の旧車は減税を! エコカー減税廃止!? 2022年度 クルマの税金どう変わる?

■ここがバカげてる自動車税制!

自動車の普及途中に成立した税金の仕組みがいまだに適用されているのが自動車税制の現状だ(pathdoc@Adobe Stock)
自動車の普及途中に成立した税金の仕組みがいまだに適用されているのが自動車税制の現状だ(pathdoc@Adobe Stock)

 排ガスによる大気汚染がひどく、毎年1万5000人が交通事故で人が亡くなり、道路網も貧弱だった50年前から大枠が大きく変わらないクルマの税制。それが今の世の中にどれぐらいそぐわなくなっているか見ていこう。

1.クルマがないと生活できない人たちを高い税金が直撃して格差が拡大!

 日本自動車工業会の試算によると、排気量2Lで車重1.5トン以下、税抜車体価格240万円の乗用車を買い、毎年ガソリン1000L使って13年間乗った時の自家用乗用車ユーザーの税負担額は238万3270円となるという。

 1年あたり18万円強だ(税金に準じる性格を持つ有料道路料金(約50万円)、自賠責(約17万円)、リサイクル料金(約1万円)含む)。これに加えて税金部分以外のガソリン代、車庫代、任意保険代などがかかってくるわけだから、クルマの維持費は相当なものだ。

日本自動車工業会による「自家用乗用車ユーザーの税負担額」によると、排気量2リットルで車体価格240万円のクルマを13年間乗ると、およそ240万円の税金を払うことになる。出所:日本自動車工業会HP「クルマと税金」より
日本自動車工業会による「自家用乗用車ユーザーの税負担額」によると、排気量2リットルで車体価格240万円のクルマを13年間乗ると、およそ240万円の税金を払うことになる。出所:日本自動車工業会HP「クルマと税金」より

 クルマなしでは生活が成り立たない地方に暮らす人や、移動にあたってハンディキャップがある高齢者などにとって、このコストは避けて通れない。地方の過疎化を防ぎ、高齢化社会の生活の質を守るためにも減税が求められる。

2.高度成長期に作られて時代遅れなうえ、「受益者負担」という税の公平性の原則に反している!

 自動車重量税は、道路整備の財源確保のために半世紀前に作られた税金で、その名の通り0.5トン刻みにクルマの重さに応じて税金が増えていく仕組み。

 クルマが重いと税金が増える、という自動車重量税の仕組みは、「大型車には立派な道路が必要で、新しく道を作るのにお金がかかるし、道路を傷めやすい上に公害の原因にもなるので維持管理費もたくさん払ってもらいますね」というロジックで正当化されていた。

 だが2009年に道路特定財源だった自動車重量税が一般財源化された。

 つまりクルマに全く関係ないことにも使ってもよい税金になった。それだと重いクルマに乗る人が税金を多く払う根拠がない。

19種類もある燃費基準達成ステッカー、どれがどういう意味なのか、違いを正確に説明できる人はほとんどいないだろう。出所:国土交通省公表資料より筆者作成
19種類もある燃費基準達成ステッカー、どれがどういう意味なのか、違いを正確に説明できる人はほとんどいないだろう。出所:国土交通省公表資料より筆者作成

 環境性能割についても、1968年に市町村の道路拡充のために作られた自動車取得税が前身で、名前が変わっただけ。自動車重量税同様一般財源化されているため、受益者負担という税の公平性の原則に反している状態が続いている。

3.40年以上続くのに「一時的」?「当面の間」税率は撤廃すべき!

 そもそも自動車重量税は、1年あたりで自家用乗用車の車両重量0.5トンにつき2500円という税率だった。それが、「暫定的に」1.64倍の4100円の税率を設定します、とされるいわゆる「当分の間」税率と呼ばれる増税が40年以上にわたって続いてきた。

 またガソリンへの税金も、本来1リットルあたり28.7円であるべきところが、40年以上に渡って「暫定的に」53.8円となっている。

 平均ガソリン価格が3ヵ月連続で160円超となったら、暫定税率から本来の税率に戻る「トリガー条項」が2010年の税制調査会において定められているが、それも「東日本大震災への税制上の対応」という理由で10年以上に渡って適用停止になっている。

 増税したければ、理由をちゃんと説明して法案を通すのが民主主義国家での税負担の原則なのに、これは明らかにおかしい。

4.二重課税は撤廃!

 1989年の消費税導入までは物品税が「贅沢品」を購入する際にかけられていた。昭和50年代には自動車、カラーテレビ、クーラーが、物品税税収の半分以上を占めていた。

 現在カラーテレビやクーラーを買っても消費税しかかからないのに、なぜかクルマを買うと消費税10%に加えて環境性能割(税金なのに「割」ってなんだよ、と毎回書くたびにイラっとする)最大3%が課税される。酒やタバコのような嗜好品でもないのに二重課税されているのが不思議でならない。

 またガソリンや軽油についても二重課税されている。ガソリン価格には1リットルあたり53.8円の揮発油税が含まれているのに、それを加えた価格に消費税10%がかかるので5.38円分、ガソリン価格を160円とすると3%以上も多く税金がかけられている。これは明らかにおかしい。

ガソリンや軽油の二重課税はよく知られたところだ(skyandsun@Adobe Stock)
ガソリンや軽油の二重課税はよく知られたところだ(skyandsun@Adobe Stock)


5.「環境への悪影響」という名目での走行距離を考慮しない古いクルマへの一律的な懲罰的課税は不合理なので廃止!

 伊藤かずえさんの30年以上乗った走行距離26万kmのシーマのレストアが最近大きな話題になり、愛車を長い間大切に乗ってきた彼女に多くの賞賛の声が集まったが、それは税金の観点からすると「環境に悪影響」だそうだ。

 自動車重量税は新車登録から13年後と18年後に、税額が跳ね上がる。

 例えば2トン以内のエコカー以外の自家用普通自動車だと、3万2800円の税額が13年後には約4割増の4万5600円に、18年後には当初と比べて約54%増の5万400円となる。軽自動車の場合は6600円が13年後に約24%増の8200円、18年後には当初と比べて約33%増の8800円となる。

 自動車税は排気量に応じて税額が増えていく。2019年10月1日以降に新車登録されたクルマに関しては減税されたが、それ以前に登録されたクルマには従来の水準で課税されたままだ。排気量2Lのクルマの場合、前者は4万3500円なのに対し後者は4万5000円となっている。

 そして自動車重量税同様、新車登録から13年経つと税額が跳ね上がる。排気量2リットルの場合、4万5000円が5万1700円と約15%高くなる。

 この旧車への懲罰的な自動車重量税・自動車税は、「古いクルマは(走行距離に関わらず)環境に対して悪影響を及ぼす」ということで実施されている。

 大事に乗られていて年間走行距離が少ない古いクルマが、1年で2万km走行する新車よりも環境に悪い、だから税金多く払え、という論理は控えめに言っても破綻している。

6.「2050年カーボンニュートラル化」を目指すなら重量・排気量に基づく課税ではなく走行・利用量を加味した実質総排出量に基づく課税が合理的なはず!

 重量・排気量が多くなると税金を多く払う、という非合理的な仕組みはもうやめにしよう。

 車検証には走行距離が記載されるのだから、走行距離あたりの平均的な温暖化ガス排出量をそれぞれの車種に割り当て、それに走行距離をかけたものを車検ごとに自動車重量税の代わりとして後払いの形で課税するか、走行距離の多いクルマ・環境性能の悪いクルマの税金が高くなるようにガソリン税や軽油税に直接課税して自動車重量税を廃止、自動車税は排気量に関係なく一律の税率にするのが最も合理的なはず。

 まとめると、再来年、2023年の4月30日が期限となる自動車関連の税制見直しにあたっては、

1.受益者負担の原則に反するクルマへの重税は非合理的で減税すべき
2.カーボンニュートラルの目標達成には走行量と環境効率を考慮した実質総排出量に基づく課税が合理的で、自動車重量税は廃止、排気量に関係なく自動車税を一律にして燃料に直接課税すべき
3.消費税と二重課税となっている環境性能割の廃止
4.揮発油税・軽油税への消費税の二重課税を廃止

 以上、4点をベストカーwebからの主張・提案としたい。

 縦割りの省益に振り回された官僚の発想でも、既得権益に考慮して既存の枠組みをツギハギしたパッチワークでもなく、日本経済を実質的に支えている自動車産業と将来の世代、環境を考えた、国家百年の計を踏まえた新たな税制の大枠を作ってもらいたいものだ。

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