華やかなモータスポーツの世界。佐藤琢磨選手の2億7000万円のインディ500の賞金はまさに「アメリカンドリーム」を感じましたが、世界のレースの賞金はおいくらか調べてみました。
すると全日本格式の競技でも「賞金なし」があったり、現実はかなり厳しいものでした。モータースポーツが今後もっと盛り上がることを願いつつ、徹底調査をお送りします。
文:ベストカー編集部
ベストカー2017年7月26号より
インディ500は世界でも破格の賞金額だ
佐藤琢磨は、第101回インディアナポリス500で優勝して約2億7000万円を贈られた。しかし、これは歴代最高額ではない。2009年に優勝したエリオ・カストロネベスには3.048ミリオンダラーというから、今のレートで3億3500万円強が支払われた。
F1グランプリは賞金を公表していないが、仮に明らかにしていたとしても、インディ500以上ということはないはずだ。
インディ500は世界でもっとも賞金の高いレースといっていいのだ。賞金の大半はインディアナポリス・モーター・スピードウェイ、そしてインディカーシリーズが提供する(親会社は一緒)。
決勝日だけで30万人以上の有料入場者を集める世界最大のイベントは、チケット収入も莫大なのだ。
その上、イベントスポンサーにはペングレイド・モーターオイルがここ2年ほどは迎えられており、ウィナーがミルクを飲む伝統があるためにアメリカ乳製品協会のインディアナ州支部がスポンサーを務めている。
観客の喉を潤すコカ・コーラ、シリーズの計測に技術提供をしているTAGホイヤー、アメリカのファンがレース観戦しながらガブ飲みするビールはミラーがスピードウェイのオフィシャル・ビールで、地元の銀行なども世界で最も長い歴史を誇るインディ500の協賛に名を連ねている。
この大スポンサーがついていることも、高額賞金が出せる理由だ。
そのほか、ペースカーを提供するシボレーは特別仕様のコルベット・グランスポーツをウィナーに贈る。このクルマの値段=1000万円強も賞金の一部に含まれている。
(TEXT:天野雅彦)
F1は賞金額は非公開ながら……!?
F1は、日本円にして年間最低でも70億~100億円を使うといわれている。
年間人件費だけで30億円を超えるチームも多く、1年間クルマ2台をまったく無開発で、無クラッシュでそのままシーズンを走らせるだけでも10億円という費用が必要だ。少しでも開発すればコストはうなぎ登り。
戦闘力のあるチームなら年間200億円、トップチームならば300億円という天文学的な金額が語られる。しかし賞金となると話は違う。
残念ながら、F1の賞金額が明らかにされたことはない。賞金はドライバーではなくチームに支払われ、この賞金額はチームのランクによって大きく違うのだ。
不公平さを感じるが、F1への貢献度が大きく左右するチームランキングなので致し方ない。
賞金はいわゆるF1分配金に組み込まれる。2017年、最も多額の分配金を支払われるのは、2016年コンストラクターズ3位のフェラーリで金額は約201億円、昨年の王者メルセデスは約191億円でフェラーリより少なく、昨季デビューし最下位を争ったハースに至っては約21億円とフェラーリの約10分の1止まりだ。
遠い昔はドライバーへの賞金が存在したが、現在トップF1ドライバーの契約金は、レース数で割ってもインディの高額賞金よりも高額だから文句は言えない。
しかし中位以下あるいはペイドライバーなら、賞金はないに等しく、契約にもしもその条項があれば、パーセンテージで払われる。
1990年に、ネルソン・ピケは出来高契約をして獲得したポイント1点につき、何千万円という契約をチームとかわしていた。
(TEXT:津川哲夫)
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