■ディーゼル人気を背景に復活を図る
ただし、ここ最近せっかく日本での販売も上向いてきたというのに、なぜいま過去のイメージから誤解を招きかねないクリーンディーゼルTDIの導入するのか……と、疑問に感じる人もいるだろう。
その背景のひとつには、昨今のクリーンディーゼルモデルの人気がある。
BMWやボルボ、プジョーなどが積極的にクリーンディーゼルを導入したことで、現在、輸入車販売全体の20%までシェアを拡大しており、BMWのSUVは、すでにクリーンディーゼルがメインとなりつつあるのだ。
VWも、そんなユーザーのニーズに応え、まずは今回導入されるパサートを皮切りに、パワフルで環境性能の高いクリーンディーゼル導入をティグアンやトゥアレグといったSUVなどメリットが大きい車種に展開したい狙いがある。
今後のTDI戦略の布石でもあるのだ。ただ効率面から、排気量な小さなTDIは導入されず、2.0L以上となる見込みで、エントリーはゴルフからとなるだろう。
■エンジン技術の発達こそが生命線
VWにとって、TDIの投入にはもっと大きな意味もある。
近年VWは積極的な電動化戦略を打ち出したことで誤解を受けている面もあるが、電動車にはハイブリッドやPHEVも含まれる。つまり高効率と環境性能向上には、今後もエンジン開発を続ける必要性があるのだ。
今後より厳しい環境基準が打ち出されることは間違いないが、技術的にエンジンはまだ進化が可能であり、日夜、開発が続けられている。
また直面するCO2削減においても、電気、ガソリン、ディーゼルをバランスよく使わなければ、目標達成がより厳しくなるのが現実という。
もし急激な電動化を推し進めた場合、バッテリーやモーターなどの供給や原材料の不足、電力供給の不足などに繋がる危険性がある。昨今の電動化対応に向けたメーカー各社の動きを見れば、その点も理解できるはずだ。
■1.4Lターボと比べると高いが2Lガソリンと比べると安い
では、シンプルにパサートの中でTDIのコスパはどうなのだろうか。
高性能化された昨今のクリーンディーゼルは決して安価とはいえず、ガソリン車の同等グレード比較で35万円高となる。
しかしながら、これは1.4Lエンジン車との比較であり、性能が近い2.0TSIを搭載するR-Lineと比べると、快適装備が同等の“TDIハイライン”で20万円、エントリーとなる“TDIエレガンスライン”なら87万円も安くなるという見方もできる。
R-Lineはスポーティ仕様となるが、最大トルクはTDIの方が優れるのでパワー面で不満を感じることはない。さらに燃費比較でも、1.4TSIは20.4km/L、2.0TSIが15.0km/Lなので、TDIの方が優れている(共にJC08モード燃費)。
■軽油だけでなく、尿素の補給も必要
忘れてならないのが、TDIには、AdBlue(アドブルー)の定期的な供給が必要な点だ。
そのコスト負担はどうなのだろうか?
AdBlueの消費量は、1000kmで約1.5Lという。車載タンクは13Lなので、およそ8700kmを走行できる計算だ。
メーターパネル内のインフォメーションディスプレイには、走行可能距離に加え、残量が減ると4段階の表示と音で警告してくれる。
AdBlueの購入価格だが、純正補充品だと1.89Lで1300円。負担は、約1km=1円ほどなので、TDIの燃費だと、+20円/L程度だ。
ただ新車から3年間の定期点検で必要なエンジンオイルやワイパーなどの消耗品をパッケージ化したNew Service Plusに加入すると、最大45Lまで補充される。年間1万km走行をクリアできるので、ほとんどの人はこれでカバーできそうだ。
また長距離走行派なら、一般流通するAdblueを購入する手もある。自身で補充が必要となるが、200円/L以下でも入手可能。値段を優先するなら、こちらがおススメだ。
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