■パワーに余裕が欲しいと感じる場面も
次は運転感覚を試す。まず運転席に座って気付くのは、視界が良いことだ。スライドドアの装着もあり、外観は水平基調だから、ボディの四隅が分かりやすい。斜め前側には、縦長のウインドーも装着した。ボンネットは手前が少し視野に入り、車幅も把握しやすい。軽自動車らしく、前後左右ともに良く見える。
最小回転半径も4.4mだから小回りが利いて運転しやすいが、ステアリング操作は少し忙しい。ステアリングホイールを右側から左側までフルに操舵すると、4.1回転に達する。走行安定性とのバランスを図りながら、ステアリングのギヤ比をもう少しクイックにできると良い。
グレードはG、ハイブリッドS、ハイブリッドXの3種類が用意され、試乗車は最上級のハイブリッドXであった。動力性能は、最高出力が49馬力(6500回転)、最大トルクは5.9kg-m(5000回転)になる。
WLTCモード燃費は、マイルドハイブリッドを搭載によって25.1km/Lだ(非搭載のGは23.9km/L)。ワゴンRハイブリッドFZは25.2km/Lだから、0.1km/Lしか悪化しない。
しかしワゴンRスマイルハイブリッドXの車両重量は870kgだから、ワゴンRを80kg上まわる。街中を普通に走る時にはパワー不足を感じないが、登坂路に差し掛かるともう少し動力性能が欲しいと感じさせる。
CVTのギヤ比はワゴンRと同じだが、車両重量の増加に応じてトルクコンバーターは変えている。それでもパワー不足を感じる場面はある。現状では最大トルクを5000回転で発生させ、4700回転を超えると加速が活発になるが、最大トルクの発生を4000回転以下に抑えると扱いやすくなる。
登坂路ではアクセルペダルを深く踏み込むのでノイズも高まる。フードサイレンサーの装着などによってエンジンの透過音を抑えたが、それでも登坂路では少し耳障りだ。
この動力性能を踏まえると、ターボを用意した方が好ましいと思うが、前述の通り販売比率は低い。つまり多くのユーザーは、ノーマルエンジンに不満を感じていないが、動力性能に余裕のある上級車種からダウンサイジングする時は、販売店の試乗車などを使って登坂路を走ると良いだろう。
操舵に対する反応は、背の高い軽自動車らしく穏やかだ。峠道などのカーブでは少し曲がりにくく感じるが、後輪の接地性は高く、走行安定性に不満は生じない。背の高い軽自動車に適したセッティングだ。
注意したいのは乗り心地で、上下に揺すられる感覚があり、路上の細かなデコボコを伝えやすい。タイヤサイズは14インチ(155/65R14)で、銘柄はダンロップ・エナセーブEC300+だ。
一般的な銘柄だが、タイヤ本体はワゴンRスマイル用に新開発された。転がり抵抗を抑えて前述の優れた燃費性能を達成しており、コストも抑えたが、乗り心地では不利になっている。
■安全運転支援装備も用意! 幅広いユーザーが満足できる
装備については安全面に注目したい。衝突被害軽減ブレーキやサイド&カーテンエアバッグは、全グレードに標準装着した。さらに全方位モニター用カメラ装着車には、ドライバーの死角に入る部分を表示する機能、立体的な3Dビュー、新たに「すれ違い支援機能」も採用した。
すれ違い支援機能は、フロントカメラがすれ違いの状態を認識すると、モニター画面にボディの前側と左側面の映像を自動的に表示する。
以上のようにワゴンRスマイルは、乗り心地では少し不利だが、街中を移動するにはちょうど良い軽自動車だ。特徴は乏しいが、荷室、シートアレンジ、収納設備などは実用的で、幅広いユーザーが便利に使える。
特に幼い頃からスライドドアを備えるミニバンに乗って育った比較的若いユーザーには、馴染みやすいだろう。いわゆる若年層のクルマ離れに向けた対策にもなり得る商品だ。
買い得グレードは、両側のスライドドアに電動機能を装着するなど、装備を充実させたハイブリッドS(147万2900円)になる。
LEDヘッドランプやパーソナルテーブルなどが欲しいユーザーは、最上級のハイブリッドX(159万2800円)も検討したい。ハイブリッドSに比べると、11万9900円の上乗せで、15万円相当の実用的な装備が加わるので割安だ。
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