新世代VNRエレクトリックの性能は?
新世代のVNRエレクトリックでは、まずバッテリー系の性能が大幅に向上した。これはバッテリー単体によるものだけではなく、新しいテクノロジー、設計、バッテリー管理技術、パッケージングなどを含めたものだ。
最初に設計を見直したことで、それぞれのバッテリー容量は40%向上した。バッテリーの温度を管理するBTMS (Battery Thermal Management System)という専用のシステムを追加し、バッテリーの動作に最適な温度環境を維持するようにした。
また、パッケージとしてはオプションの6バッテリーモデルを追加した(標準は4バッテリー。6バッテリーは3軸トラクタ車型のみの設定)。
これらを合わせてバッテリー容量は最大565kWhに拡大し、航続距離は275マイル(約443km)に伸びた。VNRエレクトリックの現行車は、それぞれ 264kWh / 241km なので、容量は約2.14倍となり航続距離は約1.84倍に増えた計算だ。
なお、実際の運用では回生ブレーキによるバッテリーへのフィードバックがあるので、航続距離はもう少し伸びる可能性がある。
充電時間の短縮も図られ、DC-250kW (CCS1/CCS2) での急速充電に対応する。80%充電までの時間は6バッテリーモデルで90分、4バッテリーモデルで60分となっている。バッテリー数を増やした6バッテリーモデルが現行車の70分に及ばないのは仕方ないところか。
トラックだけではない「輸送ソリューション」
いっぽう、VNRエレクトリックのラインアップには2車型が追加された。追加されたのは6×4リジッドトラック(単車)と6×4トラクタで、従来からある4×2リジッド、4×2トラクタ、6×2トラクタと合わせて5車型となった。
これらの車型はローカル(近距離)からリージョナル(中距離)の物流向けに設計されたものだ。ほぼ地場輸送専用モデルであった現行車と比べると運用の幅が大きく広がったことがわかる。
アメリカの物流は日本とは異なる部分も多いが、代表的な輸送でいえば、食料品・飲料輸送、ドレージ(船とトレーラの連携輸送)、ピックアップ(集配送)、ルート配送などに相当する。
ドライブトレーンは、出力 340kW(455hp) / 5492Nm(560kgm) の電動モーターと2段の「Iシフト」トランスミッションの組み合わせだが、これは現行車と同等。もともとトルクフルな電動ドライブトレーンには充分な余力があるようだ。
また、ディーゼル版のVNRが備える「ボルボ・アクティブ・ドライバー・アシスト」や「ボルボ・ダイナミック・ステアリング」といった先進安全技術は、当然VNRエレクトリックにも搭載される。
ところでアメリカといえば、「オーナー・オペレータ」(O/O)といわれる個人でトラックを購入し運送業に従事するドライバーが知られているが、もちろん運送会社の社員として働くカンパニードライバーも多い。
現状では相当な高額になるBEV大型トラックは、個人ドライバーよりはフリートオーナー(運送会社)向けの商品ということになる。
このためボルボは、電動化を検討している運送会社向けにコンサルティングを行なう認定EVディーラーシップを提供する。認定ディーラーでは、セールスは電動ソリューションに関する教育を、エンジニアはBEVトラックのメンテナンスと修理に関するトレーニングを受ける。
現在はカリフォルニアとニューヨークのディーラーが認定を受けているそうだが、全米に400あるディーラー向けに研修を行なっているところだという。
また、電動トラックの導入に不安を抱えているフリートオーナーのために、メンテナンスやロードサービス(レッカー)、アップタイム保証などをカバーしたアフターサービス契約の「ボルボ・ゴールド・コントラクト」がVNRエレクトリックでは標準装備となっている。
BEVトラックに新興メーカーが相次いで参入するなか、ディーラーシップや金融・アフターサービス、コンサルティングなど、トラックだけではない「輸送ソリューション」全体を提供するボルボに、伝統メーカーの貫禄と意地を感じる。
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