■その2:航続距離405kmのEVでありながら150万円を切る価格
パッケージは抜群なシーガルだが、スペックはどうだろうか。
シーガルのディメンションは、全長3780mm×全幅1715mm ×全高1540mmで、ホイールベースは2500mm。ヤリスより一回り小さいサイズだ。
最大出力75kW/最大トルク135Nmで、バッテリーはBYDおなじみのLFP(リン酸鉄リチウムイオン電池)ブレードバッテリー。容量は30.08kWhと38.88kWhの2種類。
30~40kWの急速充電に対応するので、日本の高速道路に多い50kWの急速充電器であれば、30分の充電で約50%の充電を行うことができる。
噂されていたナトリウムイオン/リチウムイオンハイブリッドバッテリーの搭載は、今回は見送られたようだ。
航続距離は、CLTC 基準で305kmまたは405km。CLTCは中国の乗用車電費基準で、中国のWikiによるとおよそ8掛けでWLTP相当なので、244kmまたは324kmということになる。
現地価格は約145~175万円と発表されている。
■その3:BYD最大の脅威でもある量産能力
2022年度のEV販売で、BYDは約91万台を販売し、131万台を販売したテスラに次ぐ2番手となったが、一昨年から184%も台数を伸ばして急成長したことが、なんと言ってもサプライズだった。
2022年と言えば、バッテリーや半導体の調達でどの自動車メーカーも苦しんだ年だ。しかしBYDは、以前からバッテリーや半導体を内製しており、苦しむ他のメーカーを横目に販売台数を大いに伸ばした。
この“EVをたくさん作る生産能力”こそが、世界中の自動車メーカーを脅かしている点だ。
そのBYDが、戦略車種シーガルを発表し、中国国内だけでなく、世界的にこのシーガルを販売していくことになる。
BYDの今年の販売目標は300万台以上とされている。EVとPHEVをおよそ半分づつ作っているので、EVは約150万台になるだろう。2023年にEVを150万台も作れる自動車メーカーは、BYDのほかにはテスラだけだ。
日本ではサクラ/eKクロスEVという強力な軽EVが待ち構えており、苦戦するかもしれないが、かと言って製造元のNMKV(日産と三菱の合弁会社)は、世界に打って出るほどの生産能力はない。
BYDは、中国市場とともに、第二のEV市場である欧州市場を狙うだろう。欧州はアメリカとは違い、合理的なコンパクトカーが以前から好まれている市場だ。そしてEVの普及も急速に進んでいる。
シーガルは価格はもちろん、その合理性やスタイル、質感の高さなど、欧州市場の好みにぴったりマッチする気がしてならない。
シーガルは、欧州市場でBYDがブレークするきっかけになる、と感じさせるのに十分な実力がある。そしてそれは、日系メーカーのシェアが大いに脅かされることを意味する。
■はたして日本導入はあるのか?
BYDは日本市場の攻略にも取り組んでいる。インポーターを設立し、全国に実店舗ディーラー網を100店舗以上整備することからも、本気度が分かるだろう。
シーガルが日本に導入されるかどうかは、正直、現時点では分からないが、もし導入されることになれば、300万円を切る価格になると予想しておこう。
根拠は、ATTO3が日本導入される際、装備の違いもあり単純には言えないのだが、ざっくり100万円上乗せになっており、シーガルが日本に導入される際は、175万円の上位グレードに100万円をプラスして、300万円を下回る価格になるだろうという予想だ。
筆者自身、上海モーターショーの会場でシーガルを取材しながら、BYDの実力を痛感し、これが日本に来たらかなり注目されるだろうなと、ワクワクすると同時に焦るような気持ちにもなった。
ふと隣を見ると、日本に導入されるドルフィンが置いてあった。
どうせなら試してみようと乗り込んでみたところ、BYDらしい低いフロアはそのままに、ボディが大きい分だけずっと広々としていて、快適なリアシートにゆったりと座りながら「自分が買うとしたら、もしかしてこっちかもな……」と感じたことを報告しておこう。
【画像ギャラリー】航続距離400kmオーバー!! 価格150万円を切るコンパクトEV・BYD シーガル(16枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方