新車を購入するときにしか注文できない、メーカーオプション装備のひとつがサンルーフ。
ひとたび、サンルーフを開ければ開放感抜群で、気分も爽快になるアイテムだが、昔ほど新車を購入する時に検討しなくなったように思えるのだが、サンルーフの現状はどうなっているのだろうか?
そこで、なかなか入ることのできない国内シェアトップのサンルーフ製造メーカー、アイシン精機の生産工場を訪れ、サンルーフの今を徹底取材した。
文/野里卓也
写真/野里卓也 アイシン精機
取材協力/アイシン精機
【画像ギャラリー】ヴォクシー、RAV4、レクサスLSのサンルーフと生産工場詳細写真
サンルーフでは国内トップのシェアを持つアイシン精機
サンルーフについて書く前に、それ自体は自動車メーカーが作っているのではなく、部品メーカーが生産・供給しているのはご存じだろうか。
そのサンルーフの国内シェアトップメーカーが愛知県刈谷市に本社を置くアイシン精機だ。トヨタやレクサス、それに三菱やスバル、スズキにも供給しており、国内のシェアは61%、トヨタ向けだと96%という高いシェアを誇っている。
ちなみに日本初のサンルーフを送り出したのも同社で、1977年にトヨタから発売されたセリカの手動式サンルーフが国内初となっている。
今ではガラス1枚だけの標準的なサンルーフから、ルーフに2枚サンルーフを設定した車両にルーフの半分ほどの面積を占める大型のタイプまであり、多種多様なラインアップとなっている。
まずは現在、同社で展開しているサンルーフを紹介しよう。ちなみにトヨタではサンルーフのことをムーンルーフと呼んでいるが、ほかの自動車メーカーのサンルーフと比べて機能やタイプが異なるというのではなく、名称でそう呼ばれている。
■トヨタヴォクシー/ツインムーンルーフ(フロントチルト&リア電動スライド)
■トヨタカムリ/パノラマムーンルーフ(チルト&電動スライドムーンルーフ)
■レクサスUX/ムーンルーフ(チルト&アウター電動スライド)
車両の企画段階から参加してCAEの技術が進んだことで生産も早くなった
さっそく、アイシン精機サンルーフの設計・開発部署に所属する水野量介さんと平田哲也さんに話を聞いた。
平田さんは四半世紀以上、サンルーフを設計・開発しており、これまで開発した思い入れのあるサンルーフは2003年に発売された2代目ハリアーの電動マルチパネルムーンルーフだという。
「当時、設計のリーダーとしてまとめていただけに開発の方も苦労をしました。いろんなことに初めてチャレンジした商品だったこともあり、発売後には販売店からも好評という声をいただきかなり思い入れがある」とのこと。
水野さんは直近に内装全般を扱う部署から異動してきたそうで「これからはクルマをその都度借りるシェアカーといった、従来とは違うクルマを所有するカタチが出てきています。そうしたクルマの天井で何ができるのか、どんなことができるのか、それらにフューチャーした新しい時代のクルマのルーフの機能部品を開発していきたい」とコメント。
さて、サンルーフがどのようにして製品化されるのか聞いてみた。
「自動車メーカーが車両を製作する前の企画・開発段階から参加しています。今はCAE(コンピューターによるシミュレーションや数値解析)の技術が発達しており、車体剛性の確保や細部への細かい寸法は設計段階でかなり詰めています」(水野さん)。
そして生産を行い、実際に試作車へサンルーフを装着するときは「ほぼ確認だけ」(同)の作業になり、それから量産が始まるという。
ちなみに車体自体もサンルーフ装着の有無でボディの剛性が大きく変わることがないように設計されているのだ。
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