2024年3月に大幅な進化を遂げたGRヤリス。公道における高性能っぷりはすでにおなじみだが、はたして実戦ではどうなのか。3月15-16日に沖縄で開幕したTGRラリーチャレンジに参戦した筆者が、競技の現場から普段は気付かない進化型GRヤリスの「〇と×」をド直球でお届けする!
文:山本シンヤ/写真:西尾タクト、山本シンヤ
ひょんなことからGRヤリスでラリチャレに参戦!
トヨタが「モータースポーツに勝つため、普段お客さまが乗るクルマとはどうあるべきか?」という発想で開発を行なったモデルが「GRヤリス」である。
2020年の登場以降も開発は続けられ、モータースポーツをはじめとする極限の状態で「壊しては直す」の繰り返しが行なわれてきた。そこで鍛えた成果を愚直にフィードバックさせたのが、2024年に登場した進化型である。
そのロードカーとしての実力の高さは筆者(山本シンヤ)も体感済みで、さまざまな自動車メディアで発信しているが、モータースポーツシーンではどうなのか?
ひょんなことから国内ラリーの入門編と言われる「TGRラリーチャレンジ(通称:ラリチャレ)」にドライバーとして参戦してきたので報告したい。
【画像ギャラリー】運転席からの眺めも見て! GRヤリスカッコよすぎ!(31枚)画像ギャラリーラリーカーとはいえ基本は量産車と同じ
マシンは普段はトヨタの早川茂副会長がラリチャレで使っているGRヤリスのDAT(TGR-WRG GRヤリス889)である。
2024年シーズンは従来モデルにDATを組み合わせた開発車両だったが、2024年最終戦(豊田)から進化型に変更。指定部品(ロールケージ、ラリータイヤ、4点式シートベルトなど)と推奨部品/認定部品(アンダーガード、マッドフラップ、ラリーサスペンション、バケットシートなど)を装着するが、スペック的には量産車と同じである。ターマックラリーのため、タイヤはダンロップ・ディレッツァ95Rを履く。
筆者は業界では文系に思われがちだが、実はモータースポーツ歴は長く、サーキットレースは優勝を含めた表彰台経験もある。
とはいえ、ラリーに関しては直近ではコドライバーとしての参戦が主で、ドライバーとしては18年ぶり、さらにタッグを組んだコドラの南山要一氏(GRカンパニー GR商品・ラリー事業部)はコドラ初な上に事前練習ゼロでぶっつけ本番と言う状況、そしてラリー当日は雨、と不安要素ばかりである……。
そんな状況ながらも、結果は総合1位の佐々木雅弘選手(GR86)に継ぐ総合2位を獲得!! 今回GRヤリスは筆者を含めて5台参戦していたが、「ATはMTに勝てない」というこれまでの常識も覆すこともできた。
なぜ、このような好成績を残すことができたのか? 筆者の腕といいたい所だが、やはりクルマの進化に助けられた部分もかなり大きい。その辺りをもう少し具体的に説明していこう。
意のままのDATでパドルシフト不要に!?
ドライブモードは「SPORT」で走行、スタート時はローンチコントロールを使用した。開発車両は一度ATFの温度を上げてしまうとなかなか冷えず、作動不能になることが何度もあったが、量産モデルは温度管理(停車中はDレンジのままにしない、ヒーターで熱を逃がす、ICウォッシャースプレーONなど)を心がければ、10分くらいのインターバルであっても温度が下がってくれて連続使用ができた。ただ、今回は気温が低い時期だったため夏場はどうか気になる所だ。
304ps/400Nmに引き上げられたエンジンは、高回転でパンチが増す力強さはもちろん、応答の良さ(=ターボラグが少ない)とより広まったトルクバンドから、どの回転域からでも加速態勢に入れる。中でも旋回中のアクセルコントロールはトルコンATとは思えないダイレクト感で、昔のワイヤー式のスロットルを思い出すレベルである。
DATは、シフトスピードの速さはもちろんキレの良さはDCT並みなうえに、シフト制御はアップ/ダウンだけでなく旋回中のシフトキープ(レブに当てても上がらない)も含めてドライバーの意思に忠実に反応してくれた。そのため今回SSはもちろんリエゾンでもパドルに触れることは一度もなかった。
実は以前行なわれたサーキット試乗会では、筆者は「シフトダウン制御はまだまだ改善が必要だと思う」とちょっと厳しい評価をしていたが、今回はそのようなことがなかったということは、ラリーで鍛えたDATは今も進化をし続けているということなのか??
コメント
コメントの使い方記事の通りDCT並の速さとキレがあるなら、軽くて壊れにくいぶんDCTの完全上位互換となりますね
値段高いなぁ~、しかも重いしって印象が先だってましたが、それはMT比較であって、DCTと比べたらずっと安くて軽いわけで。
ラリーの現場での戦闘力と耐久力まで証明されて、ちょっと見過ごす事のできない対象になりましたね。GRのDAT