滑りやすい沖縄の舗装路でも臆せずアクセルが踏める
フットワークの進化はどうだろう? 4WDモードセレクトは時々刻々と変わる路面環境に合わせて「TARMAC(60:40~30:70まで連続可変)」をセレクト。VSCは特に雨が酷かったSS1/3のみEXPERTモード(基本はドライバーに委ねるが車両挙動が大きく乱れた場合には乱れを緩和させる制御)、それ以外はOFFで走行を行なった。
SSは公園の駐車場を活用したパイロンスラローム(SS2/4)、道幅がかなり狭くタイトコーナーが連続する林道コース(SS1/6)、道幅は若干広めだがスピードレンジが高い(GRヤリスで4速まで入る)峠コース(SS3/5)の3つを2回走行。
ちなみに沖縄の一般道に使われるアスファルトは珊瑚由来の琉球石灰岩が使用されており、本土で使われているアスファルトよりもグリップが低い上に降雨でより滑りやすく、想像以上にタイヤはグリップしない状況。佐々木選手を含めた他のドライバーも手を焼いていた。
そんな過酷な条件ながらも、臆することなく走らせることができたのは、進化したシャシー性能とより緻密な制御になったGR-FOURの相乗効果によるモノだろう。
もう少し具体的にいうと、従来モデルに対してステアリング切り始めるとスッとノーズが入る回頭性の良さ、旋回中は重量配分が変わったと感じるくらい4輪を活用しながら、力づくではなく自然に曲がる感覚、クルマの動きがゆっくりに感じるコントロール性の高さ、そして姿勢変化を抑えながらも路面をしなやかにとらえる接地性の高さなどを実感したが、これらが結果として「意のまま」、「一体感ある」、「懐が深い」走りに大きく寄与している。
【画像ギャラリー】運転席からの眺めも見て! GRヤリスカッコよすぎ!(31枚)画像ギャラリーRCの回転半径の大きさは改善点
ちなみに今回は、“もしも”のことがあった元も子もないのでマージンをかなり取って走ったが、それでも好タイムが記録できた要因は、上記のような走り→クルマが信頼できる→限界近くで走ることができた→速く走れた……というわけだ。
開発陣は「進化型GRヤリスはよりドライバーファーストなクルマづくりを心がけた」と語るが、まさにコンペティションユースのほうがより明確に理解できた。
とはいっても、実は一度だけヒヤッとしたことが……。SS1の序盤で調子に乗って飛び込んだタイトコーナーでアンダーステアを出してしまいガードレールに吸い込まれそうに……。
しかし、本当に間一髪の所でEXPERTモードに救われた。走行条件が悪い時は制御を上手に活用して走ることも、競技を生き残るための手段の一つであると改めて感じた。
このように進化型のポテンシャルはより厳しい条件で走らせるとより実感できたが、その一方で気になる所もいくつか……。
一つは最小回転半径で、競技ベースの「RC」は15インチタイヤ対応の専用ステアリングナックル装着でハンドル切れ角が少ないため、6.0mとコンパクトカーとは思えないレベル……。今回のSS2/4の前半はクランクのようなコースレイアウトだったが、それがゆえに若干タイムロスしてしまった。
縦引きパーキングブレーキに思わぬ盲点
もう一つは引きやすい位置に移設された縦引きパーキングブレーキ(PKB)だ。PKB自体は非常に操作しやすいが、シフトレバーとの位置関係が近いため誤操作しやすくなってしまい……。
今回SS2/4の後半はパイロンスラロームでスピンターン時にPKBを使用したが、操作時に手が勢い余ってシフトレバーに当ってしまいDレンジからMレンジに……。この時3速に固定されてしまい、本来適正な2速に落とすことができずにタイムロス。個人的には競技ユースであればシフトレバーではなくシフトボタンでもいいのかな……と。
もう一つはドライビングポジションだ。バケットシート装着の時に縦引きPKBを避けるために右寄りにしなければならず、ステアリングとシートの位置関係がズレてしまうのが残念……。
と思っていたら、BRIDEが縦引きPKB対応シートレール発売というアナウンスが。さすが対応が速い!!
そろそろ結論にいこう。進化型GRヤリスのポテンシャルは、コンペティションでもシッカリと証明されたが、個人的には絶対的な速さよりも、よりドライバーファーストな走りに近づいたことが大きいと思っている。
ちなみに後日インカ―映像を見返してみたが、反省点もいくつかあったし、まだ踏める、まだ曲がれる所もあった。この辺りをアジャストしていけば総合1位も夢じゃないかな
コメント
コメントの使い方記事の通りDCT並の速さとキレがあるなら、軽くて壊れにくいぶんDCTの完全上位互換となりますね
値段高いなぁ~、しかも重いしって印象が先だってましたが、それはMT比較であって、DCTと比べたらずっと安くて軽いわけで。
ラリーの現場での戦闘力と耐久力まで証明されて、ちょっと見過ごす事のできない対象になりましたね。GRのDAT