【現役トラックドライバーが斬る!】過積載はなぜなくならない!? 重大事故から学ぶべき対応策

 2018年9月、千葉市郊外の県道交差点で、過積載のトレーラーが横転、信号待ちの軽自動車を押し潰し、男女3人が亡くなるという痛ましい事故が起きてから1年半。

 この事故では、過積載の状態でトレーラーを運行したとして、道交法違反(過積載)などの疑いで、トレーラーを運転していたドライバー、そして勤務先の会社も過積載を容認したとして書類送検された。

 この事故は過積載という違反が、重大な事故につながることを広めたが、今日も過積載のトラックが白昼堂々と走っている。今回は、過積載の実態と取り締まりの現状はどうなのか、過積載による事故をどうしたら防げるのかに迫りたい。

文/長野潤一
写真/長野潤一、東日本旅客鉄道労働組合、Adobe Stock、編集部

●長野潤一とは
トラック歴27年のベテランドライバー。物流の将来を考えながらハンドルを握る社会派ドライバー兼ライター。ベストカーで連載『トラックドライバー三番星』を執筆中

【画像ギャラリー】過積載の罰則と、それに起因した重大事故を知ろう


■過積載が多い業種とは何か? 意外に知られていない本当のところ

 東関東自動車道を走っていると、高確率で違法改造(註1)の「デカ箱ダンプ」に出くわす。60~70km/h程度でほかの交通よりゆっくり走っている。トラックの高い運転席からは、2メートルくらいまでかさ上げされた荷台のてっぺんらか積荷の土砂がチラチラ見えるので、法定の重量の4倍の40トン程度積んでいることがわかる。

※註1:土砂等禁止車両として登録すれば車両自体は違法でない可能性もあるが、土砂を運んだ時点で違法である(土砂等運搬大型自動車の規制=ダンプ規制法)

過積載ダンプは取り締まり情報を共有し、検問をかいくぐる。陸橋の上から見ていて取り締まれば一網打尽なのだが…。(千葉県の東関東自動車道:ドラレコ画像)

 大型ダンプ(ショートタイプ)はもともとの車両重量が約10トン、最大積載量が10トン、それらを合計した車両総重量が20トン以下と定められているが、過積載での総重量は50トンにもなる。行政側の対策として、上下線の習志野本線料金所などでときおり一斉取り締まりが行われているが、あまり効果がない。それはなぜか?

 取り締まりの準備にはある程度の時間がかかる。準備をしているという情報が、無線や携帯電話で瞬く間に仲間うちに広まってしまうからだ。本線で取り締まりを行っていれば側道、側道ならば本線というように、“敵”の動きを見透かしているかのごとくにルートを替えるのだ。

高速料金所における過積載車のチェック。首都高パトロール員の判断で引き込むことも

 では、過積載というのはトラック全体では多いのだろうか。答えはノーだ。一般的な緑ナンバー(事業用)のトラックでは、平成初期頃から過積載はほとんどなくなっている。メーカーの工場から物流倉庫間などで工業製品を運ぶ場合、「A商品が何トン、B商品が何トン」などというように、積荷の伝票をコンピューター管理しているため、過積載があれば記録に残ってしまう。

 コンプライアンス(法令遵守)の観点からも荷主(メーカーなど)が重量オーバーをさせることはなくなった。1994年(平成6年)に、車両総重量の指定道路制限値が20トンから25トンに緩和され、従来の10トン車タイプの新規格車が約13トン積めるようになった(もちろんシャーシやタイヤ、ブレーキは強化された)。このことも過積載がなくなった要因である。

 過積載が発生しやすいのは、ダンプ、産業廃棄物、トレーラーなどの特定の業種だ。ではなぜダンプ、産業廃棄物で過積載が多いのだろうか。荷主のコンプライアンスの問題だろう。もし、一般のトラックが物流倉庫に法定13トンの2倍の26トンを積んで降ろしに行ったとすれば「運転手さん、コレはやめたほうがいい」と言われ、出入り禁止になるだろう。しかし、建設業界や産廃業界の一部ではそれがまかり通るのだ。

 大きい現場では、ダンプはアリの行列のように次から次へと来る。重機のオペレーターが次々に土砂を積み込んでいき、1台1台のドライバーが「俺はそんなに積みたくない」などと言う余地はない。つまり、現場全体の問題ということになる。

 コンプライアンスを重視する公共工事の現場などでは、緑ナンバーのダンプを使い、最大積載量が遠くからでもわかる大きい字のステッカーをわざわざ貼り付け、定量を守っている。その量はというと、高さ50cmのベッセル(荷台)“すりきり”であり、「本来はこれっぽっちいしか積めないのか」と思うほどである。土砂の比重は約1.7であり、見た目以上に重たいのだ。日常見かける“山盛り”のダンプはほとんどが違法ということになる。

 白ナンバー(自家用)や多重下請け構造も法令違反の温床となっている。ダンプと産廃トラックにはなぜ白ナンバーと緑ナンバーが混在するのか。貨物自動車運送事業法では、他人の荷物を有償で運ぶ運送業は緑ナンバーでなければならないとしている。しかし、実態は運送業でも、土砂の販売業者であるという体裁にすれば、白ナンバーでも営業はできる。いわゆるグレーゾーンだ。

 緑ナンバーにすると、運行管理者などを置く必要があり、点呼、乗務日報・運転者台帳の作成、健康診断など安全管理のために実施すべき項目が増えるのである。また、これらに対し違反を重ねると業務停止や最悪、許可取り消し(廃業)というペナルティがある。白ナンバーのメリットは、そうした義務やペナルティがないことにある。

■トレーラーで過積載が多いからくり ― 特車申請

 トレーラーの過積載を取り締まる法律は複雑で、

[1]『道路交通法』
[2]『道路法』の車両制限令
[3]『道路運送車両法』の保安基準

の3法がある。

 [3]は最大積載量や車体の強度などを定める。[1]は、[3]を違反していないかどうか。[2]は道路の通行に関するものであり、前出の指定道路制限値(全長12m、総重量25tなど)を超える大型トレーラーのほとんどについて特殊車両通行許可申請(特車申請)が必要になる。

 つまり、ステッカーの最大積載量を守っていても、適法とは限らない。道路を走行する際には許可証を携行し、通るルートも決められる。道路の損傷を防ぐために「軸重10トン以下(エアサスセミトレーラーの駆動軸は11.5t以下)」という大原則がある。トレーラーの過積載には、特車申請を行っていない場合と、最大積載量を守っていない場合の2種類がある。

■過去の事故に学べ ― 大菅踏切事故

 千葉県では、1992年(平成4年)にもダンプによる踏切事故が発生している。最大積載量(8750㎏)の約4倍の土砂を積んだダンプが急な下り坂で止まりきれず、遮断機の下りた踏切に進入。下り普通電車がダンプに衝突し、運転士が死亡、多数の乗客が負傷した。

普通電車が65km/hで惰行運転中、突然進行方向右側から大型ダンプカーが遮断棒を突破して踏切内に進入。直ちに非常停止手配を取ったが及ばず衝突した(写真提供:東日本旅客鉄道労働組合)
普通電車と衝突して大破した大型ダンプトラック。衝突でつぶれた運転室に挟まれ、運転士が死亡した(写真提供:東日本旅客鉄道労働組合)

 運転士は直前に衝突を覚悟し、パンタグラフ降下による電源遮断などの安全措置をとっていたという。この事故を契機に、電車の前面の構造的強化(いわゆる鉄仮面化)、道交法の改正(過積載の取り締まり強化・1993年)、踏切の閉鎖・立体化(1997年6月竣工)などの対策が取られた。

 事故があった現場に行ってみた。旧下総町(現成田市)の県道103号江戸崎下総線とJR成田線が交わる地点に旧大菅(おおすげ)踏切があった。利根川から直線距離で約1kmと近く平地を連想するが、下総台地の北辺と坂東平野の境界にあり、急勾配である。

旧大菅踏切跡。事故後に立体化、踏切は閉鎖された。写真の背後から踏切に向かって10.5%という急勾配の下り坂になっている
事故現場に建立された慰霊碑は28年の歳月とともに色褪せていた

 新設された跨線橋の部分でも5.9%の危険な急坂で、旧道の踏切に向かう部分で計測すると約10.5%(6度)という、通常の道路ではあまりない急勾配であった。総重量50トンのダンプで行けばブレーキを底まで踏んでも止まらないことは容易に想像できる。現場には事故慰霊碑が設けられてが、30年近い時間とともに色褪せていた。

■横行する過積載、防ぐ有効な対策はあるのか?

 では横行する過積載への対策はないのだろうか。ひとつ考えられることは取り締まりの強化である。現在のような大掛かりな取り締まり方法であれば、すぐに知れ渡り回避されてしまう。

 その点をクリアするのが、陸橋の上などから積荷を確認して、パトカーで追跡、可搬式の重量計・マットスケールで1輪ずつの荷重(輪重)を計測、合計して総重量を割り出す方法だ。乗用車のスピード違反を捕まえるよりずっと手間がかかるが、重大事故の防止には有効だ。

総重量を計る装置、マットスケール
マットスケールに載せられ計測を受けるトレーラー

 第二には、軸重計の普及である。ヨーロッパのトラックにはエアーサスペンション(エアサス)の気圧をもとに重量を計る軸重計が付いており、過積載をしているかどうかをドライバーがリアルタイムで見ることができる。この便利な機能を国産トラックにも普及させれば、過積載は減るだろう。ただし、ダンプはリーフサスで空気圧は測れないが、すでに自重計が義務化されている。

 第三に、首都高などでの速度の抑制である。過積載の弊害として、事故の誘発のほかに道路の損傷がある。道路の損傷は重量と速度の相乗効果である。法定内積載のトラックであっても、スピードを上げれば道路は傷む。

 交通量が多く老朽化が問題となっている首都高速3号渋谷線や、もしトンネル事故が起きれば大惨事につながる中央環状線・山手トンネルでも大型トラックが東名高速などと同様に、リミッター限界の90km/hで飛ばしている現実がある。トラック輸送業界をあげて70km/hに自粛することを、私はことあるごとに業界紙などに書いているが、状況は一向に変わらない。

 現在の事故対策というのは、結果主義である。重大事故が起きても、人身事故でなければ、物損の賠償以外はほとんどお咎めなしである。一歩間違えれば多数の死傷者がでるというような場合でもだ。だから、そのきわどかった事故に対しては対策が取られない。人身事故に遭った被害者は「運が悪かった」と泣き寝入りするしかない。

 冒頭の千葉市の事故にしても、交差点が「逆バンク」という非常に危険な構造になっており、重心の高いトラックでは低速でも横転の恐れがあった。だが、千葉県警がとった対策は、当該道路を「大型貨物車等通行禁止」にしただけという、場当たり的なものであった。本来なら、全国をあげて危険な道路を洗い出し、過積載車両の取り締まりを強化すべきだった。

 人身事故が起きた時だけ、運転者や雇用主、荷主を悪者とし、被害者を「運が悪かった」とするのではなく、普段から重大事故につながるような危険な要因を見極める眼を持ち、取り除く努力をしなければならない。

【画像ギャラリー】過積載の罰則と、それに起因した重大事故を知ろう

最新号

ベストカー最新号

【MX-30今秋国内投入】2024年までの新車スクープ全情報捕捉!!|ベストカー9月10日号

 ベストカーの最新刊が本日発売!  最新号では、2021~2024年に登場する国産&輸入車の最新情報をお届け。激動の自動車メーカーの動きがすべて判明!!  そのほか、東京モーターショー2019で初披露されたマツダMX-30の最新情報から、新…

カタログ