2019年の東京モーターショーで世界初公開されながら、軽ハイトワゴンのN-WGNと同様に電動パーキングブレーキの問題で生産開始が遅れていた新型フィットのデリバリーがようやく開始された。
4代目モデルとなる新型フィットは今のところスポーツモデルのRSがなく少し華に欠ける感があるのは事実だ。
しかしその代わりにフリードに続くクロスオーバーとなるクロスターが新たに設定され、初期受注でも既報のとおり14%を占めるなど好調となっている。
当記事では新型フィットはどんなクルマなのかを見ていくと同時に、新設定されたクロスターの魅力について考察する。
文:永田恵一/写真:HONDA、TOYOTA、平野学
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歴代のDNAを継承しつつ心地よさを追求

新型フィットも広いキャビンやラゲッジスペース、燃費のよさなど「小さいけど街乗りから4人乗車+荷物での移動まで幅広く使えるコンパクトカー」というDNAは歴代モデルと共通である。
大きく変わったのは「心地よさ」の追求により、さらに日常で使いやすいパートナーを目指した点だ。
まず見た目で目立つのは親しみやすさを目指したエクステリアと視界の広さだ。

特に後者に関しては衝突の際などの力を受け止めるなどする構造物となる本来のAピラーの前方にフロントピラーを設けることで今までよりずっと大きな小窓(妙な表現だが)を設置。
結果広い視界や見晴らし、開放感を得た。この点は軽自動車と同じように性別や年齢といったユーザー層が広いフィットにとっては大きなセールスポイントとなるだろう。
新しさを感じさせるインテリア

インテリアも2020年中に発売される電気自動車のホンダeと共通の2本スポークのステアリングやメーターバイザーレスのデジタルメーターの採用などにより、未来感あるものとなっている。
またフロントシートは新世代のフレームを使っており、ソフトな座り心地で快適ながら乗員をしっかりホールドする。
機能面を見ていくと、クルマの土台となるプラットホームは先代モデルの改良版でサスペンションなど各部に細かいモディファイが積み重ねられている。

初期受注の72%がハイブリッド
パワートレーンは先代の1モーター+DCTからインサイトやクラリティPHEVにも使われているトランスミッションなしの2モーターとなった1.5Lハイブリッドと、新開発となるCVTと組み合わされる1.3Lガソリンの2つだ。

特にハイブリッドは主にエンジンで発電した電気でタイヤを駆動するシリーズハイブリッドとなることはノートe-POWERと同じだが、高速道路などの巡航中にはより燃費効率に優れるクラッチを使ったエンジン直結モードも備える。
またハイブリッドシステムはコンパクトカーのフィットに搭載するためモーターなどの小型化も行われている。
5タイプすべてにハイブリッドと4WDを設定

運転支援システムは緊急ブレーキ機能、電動パーキングブレーキの採用により停止まで対応するようになった先行車追従型のアダプティブクルーズコントロールや車線の中央を維持しようとするLKASなどから構成されるホンダセンシングが全グレードに標準装備される。
なお新型フィットのホンダセンシングは今までのミリ波レーダーと単眼カメラを周囲の情報源としたものから、単眼カメラと前後のソナーを情報源としている点にも注目したいポイントだ。
バリエーションはグレードというよりもユーザーの嗜好に合うようそれぞれのキャラクターを際立たせた5つが揃う。具体的には以下のとおりキャラクターわけされている。

【5タイプそれぞれの特徴】
■基本となるBASIC
■よりインテリアの質感などを高めたHOME
■フィットネスクラブのようにアクティブなNESS
■ラグジュアリーな方向となるLUXE
■クロスオーバーのクロスター
という具合になっていて、それぞれにハイブリッドと1.3Lガソリン、FFと4WDが設定されている。

クロスターは5タイプのなかで特別な存在!?

この記事の主役となるクロスターは新型フィットに先行して、コンパクトミニバンのフリードが2019年10月にマイナーチェンジされた際に追加されている。
フリードのクロスターはエクステリアでは悪路での干渉に対応したバンパーやサイドシルの樹脂化、ルーフレールの追加、インテリアでは木目調パネルの採用やシート表皮の変更が行われている。

しかし変わっているのはそのくらいで、「見た目だけのクロスオーバー」という感が強いが、ユーザーはこれを新鮮に感じ好評だ。
それに対しフィットのクロスターはフルモデルチェンジで加わったフィットの一員ということもあるのか、エクステリアはグリルレスの標準系に対しグリルが設けられ、専用の前後バンパーやクロスオーバーらしいホイールアーチプロテクター(フェンダーの樹脂部分)が付くなど、新型フィットにおけるポジションの違いを感じる。
なお前後パンパーとホイールアーチプロテクターの追加によりクロスターのボディサイズは標準系に対し全長で95mm、全幅で30mm拡大され、フィット史上初の3ナンバーボディとなるのが最大の特徴だ。


ライトなクロスオーバーとして魅力的
インテリアもアウトドアなどでの使用も考慮し、シートに加えアームレストなども撥水加工されたものとなる。
そしてフリードのクロスターに対し最大の違いといえるのが最低地上高だ。標準車と変わらないフリードのクロスターに対し、フィットクロスターは15から16にインチアップされたタイヤとサスペンションの変更によりFFで標準系より25mm高い160mm、4WDは5mm高い155mmとなる。

クロスオーバーというキャラクターを考えると深い雪道への対応や、クロスオーバーの隠れた魅力となる乗降性の向上のためもう20mmくらい最低地上高が高くてもよかった感もあるが、フィットクロスターをライトなクロスオーバーと見るなら十分ともいえるだろう。
価格は売れ筋となっているHOMEに対し22万円高の193万8200円からとなる。

価格に対しての感じ方は個人差があると思うが、クルマは普通の人にとっては何年かに一度の高い買い物となる商品なのを考えると、多少高くても長期間満足しながら自分に合ったものを選べる可能性が増えるというのは歓迎できる。
という点などを考えると、フィットクロスターが今後フィットファミリーにおける新たな柱として注目を集めるのはほぼ確実だろう。


