RX-8はマツダでなければ生まれてこなかった
RX-8の正式発売はRX-7が勇退した後の2003年4月だ。このことと車名から、RX-8がRX-7の後継だったことがわかる。
RX-8はマツダでなければ誕生しない、超個性的なロータリースポーツだった。

エクステリアは今見てもカッコいいと感じるデザインだ。4ドアを採用しているが、躍動感あふれるダイナミックなフォルムで、遠くからでも目立つ。
フロントフェンダーの峰を立たせたデザインとしたのは、真のスポーツカーだからである。その文法にのっとって、ロングノーズ&ショートデッキにコンパクトなキャビンを被せた。
衝撃的だったのはドアだ。ユニークなセンターオープン式リアドアを持つフリースタイルシステムのドア構造としている。
リアバンパー下は、レーシングカーのようにデュフューザー形状とした。キャビンは快適で、後席も2人が無理なく座れる広さだ。

燃費の悪さをも吹き飛ばす魅力も時代には抗えず
パワーユニットは、マツダの技術の粋を集めて設計された新世代の13B-MPS型2ローターロータリーエンジンを搭載する。
RENESIS(レネシス)のニックネームを持つ単室容積654ccの2ローターで、吸排気ポートはサイドポート方式とした。現状ではサイドポート方式のロータリーはRX-8が最初で最後となっているのが孤高の存在と言われるゆえんだ。

インジェクターや潤滑システムなども独自の設計とし、ローターそのものも10%以上の軽量化を実現するなど新世代ロータリーにふさわしい。
タイプSの6速MT車は最高出力250ps/22.0kgmで、210ps/22.6kgm版には5速MTのほか、電子制御4速ATを設定。
タイプSのエンジンはレッドゾーンが9000rpmで、そこまで一直線に気持ちよく回りきった。スムーズさも群を抜く。ロータリーエンジンならではの軽やかな回転フィールに加え、独特の排気サウンドも刺激的だ。
後期モデルはタイプRSを名乗り、最高出力は235psにディチューンされていたが、ターボで武装したRX-7と同等の性能だった。

パンチ力と高回転の伸びは少しだけ鈍ったが、実用域のトルクも厚みを増したから前期型よりはるかに扱いやすく、レギュラーガソリン仕様となったのも歓迎された。
RX-8はハンドリングも軽快だが、クロスレシオの6速MTは100km/h巡航の時、3000rpmを示す。当然、ワインディングロードで気持ちいい走りを楽しむと、みるみる燃費は悪化した。
人馬一体のニュートラルな運転感覚と刺激的なパワーフィールを身につけたRX-8だったが、NAエンジンでも燃費は今一歩にとどまった。

それを許せるだけの魅力がRX-8には確かにあった。刺激的な走りを楽しめるだけでなく、4ドアだからファミリーカーになる資質も備えていた。
しかし、時代には抗えずリーマンショック以降は燃費だけでなく排ガス規制も厳しくなり、2012年をもってロータリーエンジンとRX-8の生産を終了している。
RX-8を最後にマツダはロータリーエンジンを出していない。


コメント
コメントの使い方