整備士という職業の魅力をさらに高めるために! クルマ業界全体で解決すべき構造的な課題

整備士という職業の魅力をさらに高めるために! クルマ業界全体で解決すべき構造的な課題

 2021年に発覚したレクサス高輪の不正車検問題は、トヨタ系販売店全体に波及し、整備現場の過酷な実態を白日のもとにさらした。あれから約5年。現場の整備士たちの環境は変わったのか。複数のディーラー整備士への取材をもとに、その実態を追った。

文:佐々木 亘/画像:Adobe Stock(@Adobe Stock)
※画像はイメージです

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残業は減った……だが問題の本丸は手つかずのままだ

以前よりたしかに残業時間は減った。しかし、それでも問題すべてが解決したわけではなく、自動車業界全体での見直しが必要となる(bephoto@Adobe Stock)
以前よりたしかに残業時間は減った。しかし、それでも問題すべてが解決したわけではなく、自動車業界全体での見直しが必要となる(bephoto@Adobe Stock)

 複数のディーラー整備士に現状を聞き取りすると、「残業時間については一時期よりも大きく改善された」という答えが多く返ってきた。労務時間の管理も機能し始めており、サービス残業も減っているという。

 人員面でも「少し増えた」という声は聞かれるものの、「新入社員の採用は増えたようだが、即戦力にはほど遠い。自分たちの仕事が楽になるほど実労働力は増えていない」「人が増えてもピットが増えなければ捌ける台数は変わらない」といった声も少なくなく、ハード面の限界を指摘する声も根強い。

 表面的な数字は改善されつつある。だが、不正車検が生まれた根本的な土壌、つまりは「作業の詰め込み」については、あまり変化が見られないというのが現場の実感だ。朝から晩まで分刻みで入庫予定が組まれ、1つの作業の遅れが連鎖的に影響する状況は今も続いている。それどころか、残業が減った分、昼間の作業密度が以前にも増して高くなったという声が出てくるほどだ。

 当時の現場からは「時間がなかった」「省かなければ次の作業に支障が出る」という理由が不正の背景として挙げられていたはず。5年が経過した今も同じ状況が続いているとすれば、問題の根本にはまだメスが入っていないということになる。

残業減少とともに収入も減少 処遇改善は急務だ

残業が減ったことは良いことでもあるが、その分残業代で得ていた収入が減ることも。残業ではなく、整備士に対する基本給はもっと高くてもいいはずだ(NOBU@Adobe Stock)
残業が減ったことは良いことでもあるが、その分残業代で得ていた収入が減ることも。残業ではなく、整備士に対する基本給はもっと高くてもいいはずだ(NOBU@Adobe Stock)

 現場整備士からの残業が減ったという声と並んで、収入が減ったという声が圧倒的に多かった点も見逃せない。残業代を含めた総支給額が実質的な生活水準を支えていた整備士にとって、残業削減はむしろ手取りの減少として直撃している。

 処遇改善の鍵は基本給の底上げにあることは言うまでもないが、販売店報奨金の分配方法の見直しや、整備士への正当な評価制度の整備だけでも、一定の効果は期待できるだろう。こうした金銭的な待遇改善が伴わないかぎり、整備士を志す人材の減少傾向に歯止めはかからない。労働環境の改善と処遇改善は、セットで取り組まれなければならない問題だ。

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本気で動いたディーラーには、確かな手応えがある

もちろん、現場での改革が進んだディーラーも存在する(mapo@Adobe Stock)
もちろん、現場での改革が進んだディーラーも存在する(mapo@Adobe Stock)

 厳しい実態が続く一方で、この5年間で環境改善に本腰を入れたディーラーも存在する。なかでも大きな効果を上げているのが、店舗やピットの改築だ。作業スペースが広くなり、冷暖房設備が整った工場に生まれ変わったことで、整備士の作業効率は目に見えて向上したという。

 暑さ・寒さが和らぐだけで集中力とパフォーマンスが上がり、ミスも減る。改築後はサービス売り上げが改善したというディーラーもあり、環境投資が確かな利益につながることを証明している。

 賃金面でも、評価テーブルや賃金テーブルの見直しに取り組み、評価する側もされる側も納得感を持てる仕組みへの移行を進めているディーラーがいくつか見られた。問題の原因に正面から向き合い、解決から逃げない姿勢は、業界全体が見習うべきものだ。

 そして点検スパンの見直しに着手した販売店も多い。従来の6ヶ月点検(トヨタで言うプロケア10)をメンテナンスパックの点検から外し、定期点検を1年刻みとした。入庫量は圧倒的に少なくなり、車検作業の時間が広がったのは良い傾向と言えるだろう。

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