■ロータリーエンジン採用のレンジエクステンダーにも期待
そこで、考えられるのが、エンジン発電機を搭載することによるレンジエクステンダーという発想だ。マツダは、2013年に「デミオEV」で試作を行っている。
デミオEVのレンジエクステンダーは、ロータリーエンジンを使い、デミオという小型車の荷室下に搭載できる寸法で、180kmの走行距離を確保できる性能を持っていた。JC08からWLTCに換算したうえで、これをMX-30に当てはめれば、200+140で340kmへ走行距離を延ばすことができる。
レンジエクステンダーという着想は、BMW「i3」でも用いられている。そしてi3の発売当初、ドイツではレンジエクステンダーを装備しないEVのほうが台数で上回った。つまり、日常のクルマ移動を想定できる人であれば、レンジエクステンダーさえ不要だということだ。
そのうえで、万一の不安があるなら、レンジエクステンダーを装備すればよい。日本人は、万一の場合を気にする国民性もあり、i3のレンジエクステンダー仕様のほうが多く売れたと聞く。
マツダなら、レンジエクステンダーの効用は実証済みであり、伝統のロータリーエンジンを使って実現できる。しかも、デミオEVで試作されたレンジエクステンダーは、ロータリーエンジンを水平に搭載し、振動も騒音も少なく快適であった。このことは、マツダが「ロータリーエンジンの開発を続けている」としたこれまでの発言とも符合する。
MX-30のバッテリー冷却方式はまだ明らかでない。それでも日常の用途を基準とした速度と距離を前提に、空冷式を採用できれば、EV後のバッテリーに二次利用をしやすくなる。
一方、ホンダeやドイツなどのEVは、液体冷却を前提としているようだ。それでは、EV後の二次利用がしにくく、EV後にまだ60~70%容量を残すリチウムイオンバッテリー資源を無駄にすることにつながる。
EVが、ただ排出ガスゼロで環境によいだけで済まない時代となっており、単にクルマとして最高の性能や効率を追求するだけでなく、社会へいかに貢献し、限りある資源を無駄にせず、快適な生活と地球環境を守れるかが、EV開発の肝である。
日産は、初代リーフの発売からそこまで配慮し、バッテリー再利用をすでに事業化している。マツダも、「SKYACTIV(スカイアクティブ)」で世界にエンジンの可能性を示したように、EVにおいてもSKYACTIVの名に恥じない戦略で挑戦してほしいと願う。
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