トヨタは、2020年、魅力的な高級ミニバン2車種を発表した。2020年1月15日に発表、2月24日から中国で発売開始となったレクサスLMと、北米トヨタが2020年5月18日に発表した新型シエナである。
レクサスLMは、アルファードをベースとした高級仕様で、7人乗りと4人乗りの2つのモデルが発売され、価格は7人乗りが116万6000人民元(約1772万円)、4人乗りが146万6000人民元(2228万円)となる。
一方、1997年に北米市場にデビューしたシエナは、これまで北米市場のほか、韓国や台湾で販売されてきた全長5mを超える大型ミニバンで、約10年ぶりのフルモデルチェンジとなった。
しかし、今のところ、この2台のミニバンについて日本導入の予定はないという。
そこで、日本に導入してほしいという要望を込めて、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が改めて解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ
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レクサスLMの需要は日本でもあるのではないか
今の日本車メーカーは、クルマを世界中で販売している。日本に比べて海外の比率は圧倒的に高い。
トヨタは2019年に世界で971万台を販売したが(ダイハツと日野を除く)、国内はOEM軽自動車を含めて161万台だ。国内比率は17%にとどまる。それでもこの比率は、今の日本車メーカーでは多い部類に入る。
トヨタの国内と海外の販売比率を振り返ると、1960年代までは国内が大半を占めたが、1973年にオイルショックが発生して流れが変わった。
北米で燃費と耐久性の優れた小型車が求められ、日本車が輸出を急増させる。トヨタの場合、1990年頃には国内と海外の販売比率が各50%程度になった。
この後、景気の悪化と海外中心の商品開発で国内の売れ行きは下がり、海外は中国やアジア市場の上乗せで販売台数を伸ばした。
その結果、2000年頃にはトヨタの国内販売比率は35%に低下して、2010年には20%に落ち込んだ。これに伴い、従来以上に海外専用の「日本で買えないトヨタ車」が増えた。
近年登場した海外専用車で、特に話題になったのがレクサスLMだ。アルファード&ヴェルファイアと基本部分を共通化したレクサスブランドの高級ミニバンで、2019年に上海モーターショーに出展された。
アルファード&ヴェルフェイアがベースだから、背の高いミニバンだ。フロントマスクには、レクサス車であることを示す大型のスピンドルグリルが装着され、外観に迫力を与えている。
レクサスLMのボディサイズは、全長5040×全幅1850×全高1945mmとされる。アルファード&ヴェルファイアの全長4950×全幅1850×全高1950mm(ハイブリッド)に比べると、フロントマスクなどの変更で全長が90mmほど伸びた。
エンジンは直列4気筒2.5Lをベースにしたハイブリッドで、駆動方式は後輪をモーターで駆動する4WD(E-Four)になる。この組み合わせは、日本で売られるアルファード&ヴェルファイアと基本的に同じだ。
車内の広さもアルファード&ヴェルファイアと等しいが、LMは3列シートの7人乗りに加えて2列シートの4人乗りも用意した。
7人乗りの2列目シートは、アルファードでいえばG・Fパッケージに装着されるエグゼクティブパワーシートに近い。
4人乗りの2列目は、アルファードなら最上級のエグゼクティブラウンジシートに似た作りになる。各種の操作も電動だ。
しかも3列目を備えない2列シートだからスペースに余裕があり、前後席の間には、リムジンのようなパーテーションも装着される。2列目のプライバシーが保護され、キャビネットも備わるから一層豪華だ。
ちなみに国内で売られたアルファード&ヴェルファイアも、かつてはレクサスLMの4人乗りに似た2列シート仕様を設定していた。モデリスタが改造を施したロイヤルラウンジ(1531万1160~1578万5280円)がそれだ。
ミニバンは日本で人気の高いカテゴリーで、アルファード&ヴェルファイアがコロナ禍にあっても好調に売れていることを考えると、レクサスLMを日本で売れば台数が少ないかもしれないが、ある程度は売れるのではないだろうか。
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