三菱自の4WD技術の優位性
SUVとしての基本性能が確保される背景にあるのは、もちろんパジェロの存在である。
1982年に発売されたパジェロは、三菱が米国のウイリス・オーバーランド・モータースからのノックダウン生産を1953年に始め、その後1956年から完全国産化した三菱ジープの経験を活かした4輪駆動技術の知見から生まれたレクリエイショナル・ヴィークル(RV)である。
4輪駆動車については、トヨタや日産も永い歴史を積み上げてきたが、三菱自の技術は、その後、ランサーエボリューションへも活かされた。さらにクルマの旋回性能を高める電子制御技術とともに、独創の進化を遂げていく。
パジェロ自体は、昨2019年で国内の販売を終えているが、三菱自の4輪駆動技術と、電子制御により旋回性能を高める技術や知見は、今日のSUV商品群のなかに脈々と受け継がれているといえるだろう。
ライバルの追従を許さないデリカD:5
SUVの枠組みからは外れるが、デリカD:5も、他のミニバンと異なり三菱自が培ってきた4輪駆動技術を最大に活かした一台として差別化できている。
三菱自のイベントで登場する登坂体験のキットカーでは、パジェロやアウトランダーと同様にデリカD:5も45度に及ぶ急斜面を登り降りする。
あるいは、悪路走行を体験するオフロード場で、モーグルと呼ばれ4輪の左右前後2輪が交互に接地し、残りが宙に浮いたコースをD:5は走破できるだけでなく、途中でスライドドアを開けても車体がよじれない剛性を備えるなど、本格的4輪駆動車と同様の悪路走破力を持つのである。
三菱自の独自の4輪駆動技術を活かしたこうした商品について、2002、2002年にパリ~ダカールラリーで2度優勝した経験を持つ増岡浩氏は、「世界的な気候変動により、万一の災害にあったとき、自分のクルマを置いて帰るか、自分のクルマで家に帰れるかの違いが三菱車にある」と、表現する。
EVの強さとそれがもたらす安心感
三菱自がもう一つの柱とするEVは、そうした災害でもエンジン車以上に安心をもたらす可能性を秘めている。
たとえば、リチウムイオンバッテリーの搭載により重量が増すこと、またリチウムイオンバッテリーを床下に搭載することで低重心であることにより、水没した道路でも車体が浮かび上がりにくく、水たまりの途中で停止してしまう懸念が少なくなる。
エンジン車が水没して停止してしまう理由は、排気管から水が逆流して排気できず、エンジンが止まってしまうからだ。EVなら、そもそも排気管を持たない。
もちろん、水没した道路を走っても平気だということではなく、基本的には避けるべきだが、やむをえない状況においてはエンジン車に比べEVは災害時に強みを発揮できる要素を備えるのである。
当然ながら、そうした水没した道路での走行実験を自動車メーカーは行っており、感電の心配はない。
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