デビュー直後に瞬間風速が出せたのは大きな成果
日本を含め世界全体でのレクサスLSの販売台数は、2018年に2万9000台規模となり、昨年は1万5000台を超えている。
ジャガーのXJも同様の規模だ。XJはジャガーにとって大きな柱であり、それを無くすことは考えていない。なおかつ、その台数であればと次期型から電気自動車(EV)専用車になる。
ちなみにBMW7シリーズは、2016年以降、世界で5万~6万台の販売規模である。
地元ドイツにはカンパニー制度があり、企業の役員など管理職はその肩書に応じて使う車種を選べる仕組みがあって、ある一定数の上級車種が安定的に売れていく状況がある。
7シリーズの安定した販売台数は、そうした背景もあるだろう。
それでも、王者はあくまでSクラスだ。世界で年間に7万~8万台が売られている。
まとめれば、現行LSへのフルモデルチェンジ直後の販売台数の多さは、11年の間モデルチェンジのなかった前型からの乗り換えを待ちかねた人が多かったと考えられる。
その後は、欧州の競合車と競い合う力量を発揮しはじめたという段階にあるのだと思う。
欧州車の伝統の牙城は、消費者心理をそう容易に崩せるものではない。それでも、瞬間風速を出せたことがひとつの成果といえる。切り崩しの起爆剤となりえるからだ。
また中国での伸びが、欧州自動車メーカーへの警鐘となっていく可能性もある。
求められるのはハイブリッド以上の電動化
そのうえで、この先のレクサスLS進化への期待はどこにあるだろうか。
ことに欧州では、走行性能のさらなる向上が期待されるだろう。
しかしいっぽうで、北欧のボルボが語りはじめたように、安全の追求、交通死亡事故者ゼロへ向けた挑戦のなかで、無暗な高速走行の追求はもはや消費者も受け入れにくくなっていく可能性がある。
高性能という潜在能力は必要だが、単なる高速走行への挑戦は無意味になっていくのではないか。
環境への対応において、トヨタはハイブリッド車の知見で世界の先端をいくが、今日ではそれ以上の電動化が求められ、同時にそれが消費者の関心となっている。
象徴的なのが、テスラがプレミアムカーの競合となりはじめているとの話がある。そしてドイツでの生産を計画している。またジャガーXJは、EVへ移行することを表明している。
EVは、超高速での連続走行と、急速充電の繰り返しにおいて苦しい側面がある。走行距離が極端に短くなってしまうことや、急速充電をしにくくなる熱を生じるためだ。
それでもテスラが売れる理由は、ドイツのアウトバーンを疾走するような高級車の性能が、もはや求められなくなってきているということだろう。ジャガーも、英国人の感性を反映しているはずだ。
同時にまた、超高速で走行することをある水準で止めるなら、安全性も高まる。ボルボは、世界で販売する新車の最高速度を180km/hまでとすることを、ドイツ市場を含め決めている。
LSも、そうした流れに適合していくことになるのではないだろうか。
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