ミライース対アルトエコ超絶燃費決戦の軌跡 あの熾烈な燃費競争は狂乱だった? それとも…??

既存のアルトをベースに燃費スペシャルのアルトエコでイースを凌駕

 ちなみに最大のライバルであるアルトは、誕生から30年の節目となる2009年の年末にモデルチェンジし、7代目になっていた。

 10.15モード燃費はFF車で24.5km/Lをマークする。だが、ミライースの10.15モード燃費は32.0km/Lだから、その差は歴然だ。

 当然、ミライースは発売されるやバカ売れする。月販7000台の計画だったが、あっさりとクリアし、難なく1万台の大台を超えた。

アルトエコは改良型エンジンの出来もさることながら、燃料タンク容量を20Lとするなど徹底した軽量化も超燃費達成の無視できないポイント
アルトエコは改良型エンジンの出来もさることながら、燃料タンク容量を20Lとするなど徹底した軽量化も超燃費達成の無視できないポイント

 このままじゃ軽自動車のパイオニアを自負し、ベーシックミニを得意とするスズキのメンツは丸つぶれである。

 そこで2カ月後の11月に低燃費シリーズをアルトECOの名で送り込んだ。K6A型に代えて最新のR06A型エンジンを積み、アイドリングストップシステムは9km/h以下で自動停止する。

 また、新しいスターターモーターを採用し、省電力化のためにリアコンビネーションランプとハイマウントストップランプをLED化した。

 アルトエコはガソリンタンクを20Lの容量にとどめ、軽量化にも励んでいる。

 スズキのエンジニアの低燃費にかける執念は結実し、JC08モード燃費30.2km/Lを達成した。

ホンダのように目立たないが、スズキのエンジン技術の凄さには恐れ入る。新開発エンジンに改良型エンジンで対抗して凌駕させたのは凄いこと
ホンダのように目立たないが、スズキのエンジン技術の凄さには恐れ入る。新開発エンジンに改良型エンジンで対抗して凌駕させたのは凄いこと

 その後も燃費の記録更新に燃え、2013年2月に送り出した改良型ではエネチャージや新しいアイドリングストップ機構を採用。タイヤも超高圧の専用タイプとしている。

 この結果、JC08モード燃費は33.0km/Lまで向上した。ここで終わりじゃないのがスズキの凄いところだ。11月には圧縮比をさらに上げ、35.0km/Lという驚異的な低燃費を実現している。

新しさが魅力のイース、意地のアルト

 それでも基本設計が新しく、デザインのまとまりのいいミライースの優位は揺るがなかった。ミライースの魅力は実用燃費がいいことに加え、安全装備も充実していることだ。

 30km/h以下で作動する衝突回避支援システムのスマートアシストを筆頭に、横滑り防止装置も用意した。快適装備もそれなりに揃っているなど、コストパフォーマンスは群を抜いて高い。

完全新設計のミライースに対し、すでにあるモデルに燃費技術を投入して高燃費をマークしたアルトエコ。スタンスは違うが、相手に負けたくない強い思いは同じ
完全新設計のミライースに対し、すでにあるモデルに燃費技術を投入して高燃費をマークしたアルトエコ。スタンスは違うが、相手に負けたくない強い思いは同じ

 ライバルのアルトは、軽快なハンドリングとフットワークのよさが魅力だ。アルトエコはエネチャージや専用オイルなどを使って良好な燃費という魅力を加えている。

 が、安っぽさは否めなかったし、安全装備でも差をつけられていた。

 とはいえ、アルトエコを投入して以降、アルトの販売台数は大きく伸びている。改良モデルを出した後は、アルトエコを指名するスズキファンも増えてきた。

熾烈な燃費競争は軽自動車の新しい時代の到来の象徴

 ミライースとアルトエコの燃費競争は、軽自動車が新しい時代になったことを表している。

 それまで以上に経済性にこだわるようになったが、安かろう悪かろうではない。最新技術を駆使して燃費を向上させただけでなく、軽量化技術や先進安全技術も磨き、次のステージに上がっていった。

 だから上級の1Lクラスのマーチやパッソ/ブーン、スプラッシュは影の薄い存在となり、販売は落ち込んでいる。

現在は燃費、安全性能ともよくて当たり前というメーカーにとっては厳しい時代になっているが、その軽自動車の進化の礎となったのがミライース&アルトエコだ
現在は燃費、安全性能ともよくて当たり前というメーカーにとっては厳しい時代になっているが、その軽自動車の進化の礎となったのがミライース&アルトエコだ

次ページは : 軽自動車の基本性能の向上に大きな影響を与えた

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