歴史上最も売れたのは156
110年におよぶ歴史の中でも、とりわけ創業間もない1910年代から30年代にかけての黄金期にはレースでの活躍も目ざましく、ル・マンでの破竹の4連覇などドイツ勢をさしおいて輝かしい戦績を残している。
かのエンツォ・フェラーリが若かりし頃にドライバーを務め、やがて自身の設立したチームでF1に参戦し、強敵である古巣のアルファロメオを抑えて優勝した際に、「母を殺してしまった」と語ったのも有名な話だ。
第2次世界大戦後に量産車メーカーへと転身を図って以降も、優美なデザインはもとより、DOHCや4輪ディスクブレーキを惜しみなく与えたり、トランスアクスルや可変バルブタイミングといった高度なメカニズムをいちはやく採用して話題となった。
歴代でもっとも売れたのは、欧州COTYにも選出され、累計67万4000台を販売した「156」で、日本でもブームと呼べるほどよく見かけたことを思い出す。
ところが、アルファロメオというブランドも好意的に受け取られていたにもかかわらず、あとに続かなかった。
それはにわかファンが話題にのって買ってみたものの、それほどよいものではないと感じた人が少なくなかったり、あとを受けた「159」や「ブレラ」の重々しい走りに閉口したからだろうか。
それでも多少の不満こそ聞かれたものの、不思議と本気で悪く言う人がいなかったように思える。彼らの声にもどことなく「愛」が感じられたものだ。
新生ジュリア誕生時には世界が注目
FCA自身も、当時のアルファロメオ車はアルフィスタの期待にちゃんと応えることができていなかったと分析している。
そして、このままではいけないと一念発起した。クライスラーとジープを完全統合やフェラーリ株の売却により調達した潤沢な資金をもとに、後輪駆動ベースの新規プラットフォームを開発。
また、これまでFCAの中でマスマーケットに入っていたアルファロメオをプレミアムに格上げし、マセラティの下に位置づけた。
かくして送り出された新生ジュリアが2017年に日本でローンチされると、販売店に配されデモカーをひと目見ようと、駐車場にBMWやメルセデス、レクサスといったライバル車がズラリと並んだという。
こんなことは後にも先にもなかったと関係者が述べていたのも印象的だった。
注目度と販売が比例しない苦悩
現行ラインナップは、話題作の4Cの2020年内生産終了が報じられたばかりというのは少々残念だが、件のジュリアとSUVのステルヴィオとジュリエッタの3本柱となる。
いずれもひと目でアルファロメオとわかるスタイリングと妖艶なインテリアを身につけ、ドライブフィールは刺激的でハンドリングが極めて俊敏である点で共通する。
さらに新世代の2モデルには、クラス最強の510psを発生する「クワドリフォリオ」がある点も特筆できる。
ところが、登場から時間の経過したジュリエッタはさておき、先でも述べたほど注目を集めたジュリアやステルヴィオも、いまのところ販売は伸び悩んでいる。ターゲット層の多くに興味は持ってもらえても、愛車としては選んでもらえなかったということだ。
実は海外での状況も似ている。欧州はもとより満を持して再上陸した北米市場でも、あまり芳しい成果を上げられずにいるのは否めない。
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