シビックタイプRの転機はズバリ4代目
2015年に登場したシビックタイプRは、初代から3代目までのシビックタイプRとはまったく違うコンセプトで開発が進められた。
3代目まではエンジン、車体にスペシャルなチューニングを施し、走る楽しさを追求したモデルだった。対象となるのはストリート、サーキットであったが、ライバル云々ではなく自らを鍛え上げることが第一義にあった。
それに対し4代目はライバルに対する敵対心をむき出しにしたのが特徴だ。「ニュルブルクリンクの北コースでFF最速を目指す」というコンセプトで開発が進められた。
この頃のホンダは無難なクルマ作りで、「ホンダがつまらなくなった」とファンは落胆していたが、シビックタイプRでホンダの熱い情熱が復活したのだ。
ニュルブルクリンクの北コースでのFF車によるタイムアタックは熾烈を極め、セアトレオン、ルノーメガーヌRS、VWゴルフGTI、そしてシビックタイプRが入れ代わり立ち代わり最速ラップを更新。
4代目でも、現行の5代目でもシビックタイプRはFF最速の座を手に入れたが、それをまたライバルが更新していき、2020年8月現在で最速タイムは2019年7月にルノーメガーヌRSトロフィRがマークした7分40秒10となっている。
まだ発売前のシビックタイプRの限定車リミテッドエディションが鈴鹿サーキットでFF車の最速をマークしたとホンダが発表したが、その前のレコードホルダーはルノーメガーヌRSトロフィRだったのだ。ニュルでの最速争いもさらにヒートアップするはずだ。
フィールドは違うが、かつてランエボとインプレッサが毎年のようにエボリューションモデルを出して、お互い切磋琢磨していたのと同じで、そういうメーカーの姿勢にファンは胸を熱くするのだと思う。
FFでのハイパワー化はすでに限界状態
クルマは大パワーを受け止めるために4WD化してきたという歴史がある。特にFF車ではそれが顕著だ。
FFの場合はフロントタイヤが駆動輪であると同時に操舵輪でもある。FFハイパワー車の場合、フロントタイヤに負担がかかり、パワーアンダーステアを起こしやすい。
シビックタイプRにはコーナリング時に巻き込むように曲がるデバイスであるアジャイル・ハンドリング・アシストを装着しているが、フロントタイヤには限界がある。
シビックタイプRは320ps/40.8kgmをマークする2L、直4DOHCターボを搭載しているが、この2L、直4ターボのパワーウォーズが激化している。
最大のライバルであるメガーヌトロフィRは300ps/40.8kgm、VWゴルフクラブスポーツSは310ps/39.3kgmという具合に300psは当たり前の世界になっている。
しかし、上には上がいて、メルセデスベンツAMG A45は421ps/51.0kgmという超ハイスペックで、2L、直4ターボの頂点に君臨している。
ちなみにBMW M135i×xDriveは306ps/45.9kgmとなっていて、トルクではタイプRを上回っている。
この両モデルに共通するのがFFでハイパワー化するにあたり4WD化していることだ。
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