名門スターレット、なぜアフリカで復活!? 中身はなんとスズキの超個性派モデル


 トヨタのエントリーカーとして親しまれた「スターレット」が、なんと復活!! ただ残念ながら、日本ではなく、遠いアフリカでのお話だ。

 新型スターレットとはどんなクルマなのか? 名車「スターレット」の歴史を振り返りながら、21世紀のスターレットの詳細をお届けしよう。

文/大音安弘
写真/SUZUKI、TOYOTA

【画像ギャラリー】アフリカ市場で復活した「スターレット」! その姿をご覧あれ!!


■復活のスターレットのベースは、あのクルマ!

 トヨタ・サウスアフリカ・モーターは、2020年9月21日、新型コンパクトカー「スターレット」を発売。日本人には懐かしい名前だが、その姿、どこかで見たような記憶がある。実は、新生スターレットは、スズキからのOEMで、「バレーノ」がベースとなっているのだ。

トヨタ・サウスアフリカ・モーターから発売されたトヨタ「スターレット」
2016年3月に日本での販売が始まった「バレーノ」だったが、2020年7月はじめに販売を終了した

 これは2019年3月のトヨタ自動車とスズキの提携による成果のひとつで、バレーノの故郷のインドより供給される。

 ビジュアル的には、フロントグリルが専用仕様となる以外は、内外装ともに共通。ただアフリカでの事情とターゲットを考慮してか、パワートレーンが、インド仕様のバレーノが1.2Lエンジンとなるのに対して、1.4Lエンジンに換装。最高出力68kW(約93ps)、最大トルク130Nmを発揮する。

 トランスミッションは、5速MTか4速ATが選択可能だ。またけん引能力にも触れられており、標準で400kg、ブレーキ付きならば1000㎏まで対応としている。

 現在、アフリカ全土の販売は、商社である豊田通商が2019年1月より担当している。同社の発表によれば、アフリカでは、近い将来中間所得層の拡大が期待され、その需要を狙い、今後もスズキからの供給によるSUVやセダンなどの小型車のラインアップを強化していくという。その第一弾となるのがスターレットで、南アフリカの発売を皮切りに、順次アフリカの47か国へと拡大していく計画だ。

 南アフリカでは、スターレットが属するサブBセグメントが乗用車のなかで2番目に高い販売シェアを占める激戦区だ。これまではトヨタの新興国向けコンパクトカー「エティオス」が担ってきたが、スターレットは、その基盤を受け継ぐ。エティオスには、セダン仕様もあるが、こちらも、将来的にスズキ製へと置き換えられるとみられる。

 アフリカでの小型車のニーズは、スズキとの提携を活かし、OEMで賄う計画のようだ。ちなみにエティオスは、セグメントの22%を占めるベストセラーだけに、スターレットの役目は、重要といえる。

 意外な点を挙げると、コネクテッド機能が充実しており、車載Wi-Fiホットスポットと無料の15GBデータ通信を含む「TOYOTA CONNECT」が全車に標準化。この辺は日本より進んでいて羨ましい。ユーザーは、スマートフォンアプリで、車両情報の確認やサービス予約などが可能だ。

 価格は、20万4900ランド~27万2500ランド。日本円にして、約134万円~約170万円(1ランド=6.22円換算)となっている。中流向けとなるので、やはり現地の感覚では、高級品ではあるのだろう。もちろん、最上級グレードともなれば、駐車支援システム、バックカメラ、スマートフォン対応のタッチスクリーンオーディオ、クルーズコントロール、リヤプライバシーガラス、フロントフォグランプ、リヤスポイラーなど充実装備を誇る。

■日本の家族を支えたスターレット

 スターレットの歴史も少し振り返りたい。スターレットの歴史は、1973年に送り出された初代「パブリカスターレット」に始まる。この頃は、スターレットと異なり、コンパクトなファストバッククーペで、のちに4ドアセダンも追加する。これは当時、パブリカの上級車というポジションだったことが大きい。

トヨタ「初代パブリカ・スターレット」。ジウジアーロが手掛けた直線的でスポーティなデザインが特徴的だった

 その名を広く知らしめたのは、1978年に登場した2代目だろう。このモデルより、馴染みのハッチバックスタイルに採用。ただ他社の小型車のFF化が進むなか、スターレットは、プラットフォームを刷新するも、FRにこだわった。この素性が、家庭からモータースポーツまで幅広い活躍を生む。女性専用仕様「リセ」やアイドリングストップ機構「エコランシステム」の採用など、時代のニーズを読んだ先進的な一面もあった。

トヨタ「スターレット 1300」。当時のライバルがどんどんFF化するなかで、FRにこだわった

 1984年登場の3代目では、ついにFF化。やはり経済感覚がしっかりしており、早くもリーンバーンエンジン搭載車も用意。しかし、我々の記憶に強く残るのは、高性能な「ターボ」だ。

 エアインテーク付きのボンネットやフルエアロなど、生意気にもスポーツカー風味を強めたデザインは、まさにボーイズレーサー。エンジンは、インタークーラー付きターボの武装により最高出力110psまで強化。その走りは、「韋駄天ターボ」の愛称に相応しいものだった。しかし、かなり無理もあったようで、じゃじゃ馬的な手強いモデルでもあった。

 最後のスターレットとなったのは、1996年の5代目モデル。当時、トヨタが安全ボディとしてPRしていた「GOA」ボディを採用したアレである。スポーツモデルには、「グランツァ」という名が与えられ、マークII3兄弟にならい、NAが「グランツァS」、ターボが「グランツァV」と呼ばれた。

経済性を維持しながら、元気な走りも楽しめたターボモデルの「スターレット グランツァV」

「21世紀のベーシック」を謳い開発されたが、21世紀の到来を待たず、1999年に生産を終了。わずか3年の短命に終わったのは意外であったが、その後は、世界戦略車としてのヤリスが受け継ぎ、4世代目となる現行型で、名称が世界共通の「ヤリス」に改められた。

 家庭からモータースポーツまでの伝統は、ヤリスにもしっかりと受け継がれている。ただ新生スターレットには、そういう魅力は期待できないのが、ちょっと寂しくもある。ただスターレット復活のニュースで懐かしさがこみあげてきた人が多かったのではないだろうか。

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