■新登場のメグロK3は2019年登場のW800を踏襲
新登場したメグロK3は、2019年にモデルチェンジして発売された現行W800がベース。これにメグロのエンブレムやK2をイメージさせるカラーリングを施している。
エンジンは前身となるメグロK2の並列2気筒OHV 496ccからベベルギア駆動のOHC 773ccに拡大。吸気もキャブレターではなくFIで、排気系にはキャタライザーやO2センサーを装備し排出ガス規制に対応している。
車体まわりでは、2019年型のW800で強化されたフレームを踏襲。リアブレーキはABSを装備した新作ディスクとしている。
こういった現代的な装備以外は、バーチカルツインのエンジンやフロント19インチのスポークホイール、レトロスタイルのスイッチ類など、細部まで1960年代のイメージを残すよう配慮されている。
これだけでも十分メグロらしくなるのは、W800シリーズがかつての650W1を再現したもので、さらにW1はメグロをベースにカワサキが製品化したモデルだからだ。
通常の新製品は、モデルのコンセプトやハードに重点が置かれるものだ。だがメグロK3の発表資料を見渡しても、そこにウエイトは割かれていない。やはりタンクバッチを軸に歴史を語ることが最も大きなポイントだろう。
■飛行機屋の意地が開花! カワサキ逆転のブランドストーリー
メグロは戦前から大型バイクを生産する名門。同社のモデルは東京オリンピック(1964年)聖火リレーを先導する白バイにも採用されており、トップブランドとして認知されていた。
一方、川崎航空機工業は、戦後に航空機の生産を禁止され平和産業に転換。消火器やタイプライターなどを生産して細々と食いつなぎながら二輪事業にも進出し、1953年に明石工場でKE/KB型エンジンの生産を開始したのが第一歩となる。
同年にホンダは大衆向けの完成車「ベンリイJ型」をリリースしており、カワサキは大きく出遅れていた。これを挽回すべく、1961年に初めてカワサキブランドを冠した「カワサキペットM5」をリリースするが、スーパーカブC100の牙城を崩すには至らず、経営が傾いたとも言われている。
このように川崎航空機工業が企業としてのあり方を模索していた時期にパートナーとなったのが、目黒製作所だ。
大排気量を得意とするメグロは、二輪の大衆化、小排気量化の波に乗れず苦戦しており、1960年に川崎航空機工業と提携。1964年には川崎航空機工業に吸収合併された。
両社とも苦難の1960年代前半を送ったのだが、ここには後の成長の芽が宿っていた、メグロの4ストローク2気筒が1966年のカワサキ650W1に発展し、さらに次世代の4ストローク機である「900スーパー4・Z1」(1972年)につながっていくのだ。
大排気量車の性能競争で世界トップに躍り出ることになるカワサキ。その礎となったのが、メグロと言えるのだ。
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