ビッグマイチェンも奏功せず!?
この状況を打開するため、エルグランドは2020年10月12日に大幅なマイナーチェンジを実施した。フロントマスクは刷新されて存在感を強め、2台先を走る車両も検知可能な前方衝突予測警報など、安全装備も充実させた。
しかし本稿執筆時点で明らかになっている2020年10月の登録台数は、400台を下回っている。
果たしてエルグランドのマイナーチェンジは、これから販売面にどのような効果をもたらすのか。2020年11月以降に登録台数を伸ばす可能性はあるのか。このあたりを販売店に尋ねた。
「エルグランドの納期はだいたい1カ月半です。2020年12月上旬に契約した場合、納車されるのは、正月休みを挟んで1月末でしょう。ただし2トーンのボディカラーは納期が長く、納車は3月上旬です」
と、まずは納期について説明してくれ、現状について続けた。
「現行エルグランドの発売は2010年なので、モデルチェンジを待っていた従来型のお客様は少なくありません。そこで何台か注文をいただきましたが、売れ行きが急増したわけではないです」
コメントからは状況は芳しくないようだ。
e-POWERがないことが辛い
なぜマイナーチェンジで売れ行きが大きく伸びないのか。どのような変更を施せば好調に売れるのか。この点も尋ねた。
「e-POWERが追加されたら、必ず買うと仰るお客様は多いです。ミニバンはボディが重く、燃料の消費量も増えます。そこでセレナはe-POWERを搭載しました。トヨタもエルグランドのライバル車となるアルファードなどに、ハイブリッドを用意しています。ところがエルグランドには設定がありません。このほかプロパイロットも用意すると、セールスポイントになります」
エルグランドはフロントマスクの存在感を強めるマイナーチェンジを実施したが、それ以外の改善点は弱いようだ。
安全装備は高い関心が寄せられ、充実度を高めると販売にも結び付くが、e-POWERが用意されないのは辛い。
ライバル車のアルファードやオデッセイ、ひとまわり小さな日産のセレナやヴォクシー系3姉妹車など、今のミニバンはハイブリッドを選べるのが常識になっているからだ。
安全装備、運転支援機能は充実したが見劣りする現実
運転支援機能には、車間距離を自動制御できるインテリジェントクルーズコントロールが用意されるが、プロパイロットとは仕組みが異なる。
車線の中央を走れるようにステアリングを支援する機能もなく、クルーズコントロールも全車速追従型ではない。以前から採用されている設計の古いタイプだ。この欠点を販売店は、どのように補っているのか。
「ミニバンの需要は、今はセレナが支えています。セレナにはe-POWERやプロパイロットも用意され、シートアレンジは多彩です。自転車を積む時も、荷室の床を低く抑えて天井の高いセレナが適しています。アルファードと比べてエルグランドを選ぶお客様は少ないですが、ヴォクシーやステップワゴンと比較してセレナを選ぶお客様は多いです」
このように日産ではミドルサイズミニバンのセレナが優等生で好調に売れるため、エルグランドの登録台数が伸び悩んだ面もある。
そうなるとエルグランドに多額の開発コストは費やせず、売れ行きがさらに落ち込む悪循環を招いてしまう。
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