■我が人生の1台“ヒップアップクーペ”「クルマも女もケツが上がってるのが好き」
「GTOのMIIで、1600CCのサターンエンジン。定評があるエンジンで、よく回った。当たり外れがあまりなくて、だいたい当たり。なかなかよかったよ。3年ぐらい乗ってた」
自分で初めて買ったクルマ。タフなエンジンも魅力だが、何よりもボディの形状が気に入っていた。「ヒップアップクーペって言って、車体のケツが上がった形。あれが好きでね。クルマも、女もそうだけど、小股の切れ上がったというか、ケツがきゅって上がってるのが好きなのよ(笑)」
「ヒップアップクーペ」はGTOの別称だ。リアの部分が反り返って、お尻が上がっているように見える。もちろん空力を意識したデザインだ。空気の抵抗を受け、駆動力をしっかり路面に伝えることができる。ダウンフォース(自動車を路面に押さえつける力)を稼げる。
「セリカにもリフトバックって言って、ヒップアップしたモデルがあるけど、オレはやっぱりGTOの方が好きだったね」
運転席のパネルは、近未来的な8連メーター。嵐には、飛行機のコックピットのように見えた。とにもかくにも格好よかった。「無駄にメーターが多いんだよ。で、だいたい1個はバカになってる(笑)」
そんな思い入れのある愛車。印象に残るエピソードも数多くあるだろうと尋ねると…。
「ナンパ車だもん(笑)。それに、クルマの思い出って、どれも女にまつわることばかりだなあ(笑)。そういえば、あいつと会ったのもこのクルマだった、ナンパしたのはあのクルマだったとか。特にGTOはナンパした女の数が多かった(笑)」
ナンパの場所は専ら横浜。地元の戸塚が多かった。「場所を言うと、笑われちゃうね。当時、畑ばっかりだもん。近くにあったダイエーで、ナンパすんだよ。ダイエーできてさ、田舎もんはみんなあそこに集まる。1階にドムドムバーガーがあって、そこが不良のたまり場。で、テラスに座って、ハンバーガーを食いながら女の子を品定め。『お前、何番目に座ってる子に行け、お前は何番目だ』って。順番を決めてナンパする。懐かしいなあ」
ドムドムハンバーガーは、マクドナルドよりも前から日本にあるハンバーガーチェーン。運営がダイエーの子会社だったことから当時のダイエーには店舗があった。ハンバーガーと言えば、嵐にとっては象のマークでおなじみの「ドムドム」だ。
当時はまだ銀蝿のデビュー前。「女性関係のスキャンダルはご法度」だった銀蝿時代と違い、嵐も20代前半の青春を謳歌している。そんなやんちゃをしていた日々だけに、GTOで印象に残るエピソードは、運転よりも助手席に乗った女性のことばかりなのだという。
最初に結婚した妻も、知り合ったきっかけはナンパだった。「江の島(神奈川県)の花火大会に行ったんだよ、GTOで。その帰りにすごい渋滞に巻き込まれた。それが一番の思い出かな」
詳細を語らないが、渋滞でクルマが進まないと、必然、助手席の彼女との会話が多くなり、2人の関係性がぐっと親密になるということか。車内を包むやわらかな雰囲気が伝わってくるプラトニックなエピソードだ。
嵐のGTO愛は、弟の翔にも伝染する。翔が初めて購入したクルマがやはりGTOだった。「兄弟で同じって、バカだよね(笑)」
十数台に及ぶクルマ遍歴の中で、唯一同車種を乗り継いだのもGTOだけ。計3台。まさに生涯の1台だ。
「3台目はGTOのGS-R。オーバーフェンダーが格好よかった。銀蝿のセカンドアルバム『ぶっちぎりII』(1981年)のジャケット写真に使ったぐらい惚れていた」
購入から40年以上経った今でもGTOへの愛情は変わらない。「次に買うとするなら、やっぱりGTOのMIIだな。昭和47年、48年ぐらいまでの。もう“タマ”はほとんどないだろうけど。オレの原点のクルマ。やっぱり格好いいもん」
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