衝突の危険はライダーにちょっとした揺さぶりをかけて警告!
この度ボッシュがシステムの量産化を実現したARASは、レーダーセンサーによるサラウンドセンシング技術を活用することで安全性と快適性を高めることが狙いにある。その目玉がACCとなるが、それ以外にも衝突予知警報と死角検知の2つの機能が盛り込まれている。
まず、衝突予知警報は、ACCと同じ前方を監視するレーダーセンサーを活用した機能だ。前方160mを見渡すレーダーが衝突の危険を察知し、ライダーがその対応をしない際にメーター画面に警告を表示してくれる。他にも、衝突の危険が迫っているのにもっといい手はないの? というニーズに応えられるよう「警告ブレーキパルス」という手段も用意されている。
これはシステムがブレーキ制御を行うことで人工的なパルス=振動を発生させるもので、バイクが挙動で衝突の危険をライダーに警告してくれるのだ。まるで相棒役のようなバイクのスーパーアシストに、もしこれで衝突を回避できたらバイクに感謝し愛情すら覚えてしまうだろう。
ACCや警告ブレーキパルスは、ブレーキを操作するMSCユニットが作動を実施するが、ACCでは一般的なライダーの手足に勝るきめ細かい操作によって不必要な挙動を起こさずにブレーキ制御を実施。また、警告ブレーキパルスでは、人間の手足では実現できないほどの素早いブレーキ制御で車体を不安定にすることなくライダーに衝突の危険を知らせてくれる。
もはや機械による作動は人間のテクニックを超えており、本気で頼れるレベルに到達しているからこそ、ARASが成り立っているのだ。
二輪ならではの課題はバランス維持だが、克服すれば自動運転につながる!?
ボッシュの開発車両で設定されているACCの作動速度域は30~160km/h。30km/h以下の低速域ではライダーに操作が任されるようになる。つまり、発進停止を繰り返すような渋滞ではこれまで通りライダーが加減速を繰り返す必要があり、ここでもACCが機能して欲しい場面でその恩恵に預かれない。
また、前の車が30km/h以下に減速する際はライダーにブレーキが引き継がれることになり、現状バイクでは自動ブレーキ機能は実現が難しいことも示唆している。速度が低くなるほど不安定になるバイクでは、これは仕方ないだろう。
ここで思い浮かぶのが、自立するバイクの存在だ。2017年にホンダが公開した「ホンダライディングアシスト」は、ライダーが両足をステップの上に置いたままの状態でも停止できるだけでなく、ライダーが不在でも走行が可能だ。タネはステアバイワイヤと可変キャスター角機構による制御で、ハンドルから後ろは一般の量産車を使用。未来のバイクを現行車が体現しているギャップが、バイクにおける自律走行の実現をライダーに意識させたといえる。
その後、2018年にはBMWが無人で走るバイクを公開。BMWはより簡易的なメカニズムで、既存モデルのステアを電子制御化し可変キャスターはなし。ホンダのように停止状態で自立はできないが、発進してしまえば人間の助けなくバイクだけで走行が可能となっている。
これまで解説したように最新のバイクではアクセルやブレーキの電子制御化が進んでおり、ハンドル操作が自動化できれば自律走行が現実になる可能性を秘めているのだ。
これらのバランス制御技術とレーダーセンサーが組み合わされれば、バイクでも自動運転技術の範囲がより広く発展する可能性があるところまで来ているのが今の状況となる。これに乗り出すメーカーがあればだが、渋滞走行をバイク任せにできるACCや自動ブレーキ機能も不可能ではないだろう。
ただし、これがバイクの楽しみに影響してしまっては意味がない。楽しみを維持したまま安全性のレベルをこれまで以上に引き上げてくれるなら大賛成だ。
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