エンジン車の燃費改善はクルマの付加価値になりにくい?
いずれにしても、2021年には二酸化炭素(CO2)排出量規制が強化され、それまでの120g/kmから95g/kmへと2割の改善を企業平均で求められ、電動化へいつ移行するかの時期が早まっただけともいえる。
日本では、ガソリンエンジンの熱効率を40%以上に高める挑戦がおこなわれ、ハイブリッド車(HV)のエンジンで実現の動きとなった。だが、技術的に優れていても、たとえばトヨタの上級セダンであるカムリの場合、前型に比べ現行車はエンジン音が大きくなり、快適性を落としている。開発者にその点を尋ねると、事実であることを認めた。
あるいは、マツダがSKYACTIVの次の段階として、予混合圧縮着火(HCCI)の実用化を目指し、火花点火制御圧縮着火(SPCCI)によるガソリンエンジンをマツダ3で売り出した。
ところが、市場が期待したほどの燃費性能ではなかったことに加え、燃料をプレミアムガソリン(編注:いわゆるハイオク)としなければならず、ディーセルターボエンジンとの差別化が難しい状況となった。
つまり、エンジンの燃費への挑戦は、技術的になお改善の可能性はあったとしても、クルマの商品性において、価格に見合った価値であるかどうかも含め、低下させてしまいかねない状況が現われたのである。それでは、新商品の重要な訴求点とはならない。
予防安全ではホンダ、日産、スバルなど個性的な技術揃う
一方、世界の自動車メーカーは、交通事故死傷者・重篤者ゼロを目指している。先進安全車(AVS)の取り組みは、国内においても1991年から国土交通省を中心にはじめられ、自動車メーカーや大学などが研究・開発に努めてきた。
そうしたなか、2009年にスウェーデンのボルボが衝突を回避する自動ブレーキ搭載車の発売の認可にこぎつけ、それをきっかけにスバルのアイサイトも衝突回避の自動ブレーキを市販できるようになった。
ここから、運転支援技術の実用化が大きく前進する。そして、完全自動運転までの段階が世界的に規定されるようになり、レベル0からレベル5までが定義づけされた。
現在は、レベル2の段階であり、今春発売予定のホンダ レジェンドがレベル3の技術を実用化する予定だ。それより先に、ドイツのアウディがレベル3の技術を市販水準まで高めたが、公道を走行できるまでには至っていない。
また、レベル2の段階でも、全車速追従クルーズコントロールや、車線維持機能、自動車線変更などが実用化されている。それらを利用すると、あたかも自動運転が実現したかのような印象を持つまでに仕上がっている。
そして、日産スカイラインの「プロパイロット2.0」では、高速道路や有料道路などにおいて、ハンドルから手を離して走行することができるようになり、スバルのアイサイトXでは渋滞内でのハンズフリーも実現している。
商品性の訴求に安全性能は使える
こうして、自動化を進めるなかで、その手前の段階での運転支援機能の搭載が差別化の要素となっている。つまり商品性の訴求に安全性能は使えるのである。
なおかつ、高齢者による交通事故が話題となったことで、政府は「安全運転サポート車(通称サポカー)」への支援も行っている。
もちろん、環境性能の優れる新車への優遇税制も実行されているが、今後は電動化を進めた車種に絞られていく状況にあり、エンジン車の燃費は関りを薄めていく。
もはや燃費に関しては、電動化し、EVをいかに早く導入できるかが勝敗の分かれ目となりつつあって、そうなれば、一充電走行距離が商品性に関わるかもしれないが、もはやエンジンの燃費は問われなくなる。
そして、モーター駆動となれば、排出ガスはゼロとなり、振動や騒音といった商品性もさらに向上し、背反する性能の追求といったエンジンでの苦労が無くなるのである。
また電動化によって、自動運転への道さらにも拓けていく。エンジンに比べおよそ1/100の速さで駆動力制御ができるからだ。つまり安全は、これからも向上していく伸びしろを持っている。だから商品の優位性を表すのに好都合なのだ。
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