燃費より安全で差をつける!? 新車の訴求ポイント なぜ変化?


 燃費から安全へ。新車の訴求ポイントはなぜ変化している?

 新車の購入を検討する際、必ず見るカタログ。最近では各メーカーの公式HPにも各車種のページがあり、カタログ替わりに見ているユーザーの方も多いのではないだろうか?

 その情報に近年、変化が生じている。ひと昔前まで「JC08モード燃費35.0km/L」など燃費性能を前面に押し出す車種・メーカーが多かったが、ここ数年の新車は、燃費より安全性能を、より目立つ位置でアピールする車種が目立つようになってきた。

 例えば、トヨタのヤリスなども公式HPの「特長」ページでは、燃費を含む「走行性能」より「安全性能」を、上に表示させて訴求している。なぜトレンドは燃費から安全へと移ったのか? その背景には明確な狙いがある。

文/御堀直嗣、写真/SUBARU、DAIHATSU、TOYOTA、NISSAN、池之平昌信

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飽和状態に達した燃費競争と道半ばの予防安全技術

 燃費競争から安全の訴求へ、近年の新車の商品性の主張は、変化している。理由は明確だ。燃費競争は、エンジン改良がそろそろ限界に来ていること。

 一方で、安全のなかでも、事故を予防する視点を含めた自動運転への道は、まだ半ばであり、到達には多くの課題解決を含め、技術革新が求められているからだ。そこが差別化の要素となり、新車の商品性を主張するうえで特色を出しやすい。

 燃費競争は、トヨタが初代プリウスで1997年に突破口を開いた。ガソリンエンジンの乗用車の燃費を2倍に向上させるという開発目標を達成したプリウスは、当時の10・15モードで28km/Lを実現し、これは軽自動車の燃費を上回る水準だった。

1997年に世界初の量産ハイブリット車として登場した初代プリウス。2011年まで採用されていた燃費測定10・15モードで 軽自動車の燃費を上回る28km/Lを実現した

 経済的で燃費のよい大衆の味方という軽自動車の牙城が崩されようとして、軽自動車を販売するメーカーは躍起になって燃費向上に努めた。

 そして、ダイハツのミライースが登場する。2011年にJC08モードで30.0km/Lを実現した。直前には、マツダがSKYACTIVと呼ぶエンジン技術を投入した高圧縮比のガソリンエンジンで、10・15モードながら30.0km/Lの燃費をデミオ(現在はマツダ2)で達成している。

 初代プリウスの登場で電動化の動きが高まりを見せようとしたが、それから15年弱でエンジン技術が大きく前進し、あわせて変速機の効率化も進み、軽自動車を中心としながら登録車のコンパクトカーなどが燃費競争に奔走した。

 また、輸入車は、欧州で高い人気を得たディーゼルターボエンジンの日本向け排出ガス浄化規制対応を進め、日本でのディーゼルターボ車の販売も開始する。

 こうして燃費性能が商品性を牽引することになった。ところが、2015年のフォルクスワーゲンによる米国でのディーゼル排出ガス偽装問題が表面化し、欧州の自動車メーカーは急速に電動化へ方向転換した。

エンジン車の燃費改善はクルマの付加価値になりにくい?

 いずれにしても、2021年には二酸化炭素(CO2)排出量規制が強化され、それまでの120g/kmから95g/kmへと2割の改善を企業平均で求められ、電動化へいつ移行するかの時期が早まっただけともいえる。

 日本では、ガソリンエンジンの熱効率を40%以上に高める挑戦がおこなわれ、ハイブリッド車(HV)のエンジンで実現の動きとなった。だが、技術的に優れていても、たとえばトヨタの上級セダンであるカムリの場合、前型に比べ現行車はエンジン音が大きくなり、快適性を落としている。開発者にその点を尋ねると、事実であることを認めた。

SKYACTIV-Xエンジンを搭載するマツダ3。WLTCモード燃費は17.4km/Lで、ディーゼル車(XD)は同19.8km/Lだ

 あるいは、マツダがSKYACTIVの次の段階として、予混合圧縮着火(HCCI)の実用化を目指し、火花点火制御圧縮着火(SPCCI)によるガソリンエンジンをマツダ3で売り出した。

 ところが、市場が期待したほどの燃費性能ではなかったことに加え、燃料をプレミアムガソリン(編注:いわゆるハイオク)としなければならず、ディーセルターボエンジンとの差別化が難しい状況となった。

 つまり、エンジンの燃費への挑戦は、技術的になお改善の可能性はあったとしても、クルマの商品性において、価格に見合った価値であるかどうかも含め、低下させてしまいかねない状況が現われたのである。それでは、新商品の重要な訴求点とはならない。

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