ルノー仕込みの足回りで新型ノートは乗り心地&ハンドリングも高水準
まずは新型ノートの商品力が大幅に向上したことだ。先代型に比べると内外装の質が高まった。
開発者は「内外装を価格の安いノーマルエンジン車と共通化したら、インパネなどの質感をここまで高められなかった。バリエーションを価格の高いe-POWERに絞ったから、内装も上質に仕上げられた」という。
プラットフォームの刷新も利いている。開発者によると「新型ノートのプラットフォームや足まわりの開発には、ルノーが積極的に参加した」とのことで、ルノー ルーテシアや日産 ジュークと基本的に共通だ。
新型ノートを運転すると、足まわりが柔軟に伸縮して、コンパクトカーとしては乗り心地がとても上質だ。なおかつカーブを曲がる時は、旋回軌跡を拡大させにくく、操舵角に忠実によく曲がる。
そうなると峠道などでは、ボディの傾き方が大きくなる場面も生じるが、挙動の変化が穏やかに進むから車両の動きが不安定になりにくい。故意にアクセルペダルを戻す操作をすることで、車両の進行方向を滑らかに内側へ向けることも可能だ。
このように新型ノートは、快適性、安定性、車両との一体感を伴う運転の楽しさなどを高水準で調和させた。ライバルと比べると、フィットは新型ノート以上に広い後席と荷室を備える。独自のメリットを発揮するが、ヤリスの立場は辛くなった。
ヤリスの後席と荷室は、新型ノートよりも狭く、メリットは走りの軽快感と優れた燃費になるからだ。燃費はヤリスハイブリッドが優秀だが、乗り心地と運転する楽しさは、新型ノートが勝っている。総合的に見ると新型ノートが魅力的だ。
そして新型ノートのドライバーを中心にした運転感覚は、従来の日産車とは大きく異なる。日産がルノーと業務提携を結んで約20年を経過するが、商品に落とし込んだ時の一番のユーザーメリットは、新型ノートといえそうだ。
乗り替え需要とe-POWER誕生が人気を保つ理由
新型ノートが今後も高人気を保つ2つ目の理由は、膨大な乗り替え需要だ。ノートの初代モデルは2005年に発売され、販売累計は146万台に達した。このうち44万台がe-POWERだ。従来型からの乗り替え需要も多く、新型の売れ行きも伸びる。
3つ目の理由は、2011年以降の日産が国内へ投入する新型車を滞らせ、堅調に売れる日産車も激減したことだ。
2020年にはコロナ禍でクルマの売れ行きが全般的に落ち込んだとはいえ、同年に月平均で2500台以上売れた日産車は、ノート、セレナ、デイズ、デイズルークスのみだった。ほかの車種は販売が低迷している。
その結果、前述のノートなど4車種の販売台数を合計すると、2020年に国内で売られた日産車の64%を占める。同年にはコンパクトSUVのキックスも加わって期待されるが、タイ製の輸入車でグレード数も限られるから、小型/普通車登録台数ランキングで上位に入るほどではない。
つまり、今の日産では、好調な販売を見込める商品が少ないため、上記の4車種にディーラーの販売力も集中する。特に生産を終えたティーダやキューブは上質なコンパクトカーだったから、ユーザーから見ると、ノーマルエンジンを搭載する先代ノートでは物足りなかった。
そこでe-POWERを加えた後の2017/2018年は、先代ノートの平均登録台数が1か月で1万台以上に急増した。「ノートe-POWERなら許せる」と判断したからだ。
表現を変えると「日産車を買いたいのに、その対象になり得る優れた商品がない」という不満が、先代ノートe-POWERの好調な売れ行きに結び付いた。新型についても、数多くの日産車ユーザーが乗り替えるだろう。
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