二度目の緊急事態宣言が発令され、再び深夜の繁華街から人が消えた。
ここ数カ月、新型コロナウィルスの影響で春夏には普段の30%にも満たなかったタクシーの売上は「Go To トラベル」の効果もあってか徐々に通常に戻りつつあった。
「これならがんばれば何とかなるかも知れない」と今後の見通しがわずかに明るく見えた矢先の緊急事態宣言。希望から一気に絶望に落とされたダメージは収入だけでなく精神的にもかなり厳しいものとなった。
最初の緊急事態宣言発令から約9カ月、2021年1月に2度目の発令を受け前回との違いや人の流れの変化、テレワークの普及などコロナ過が業界全体にもたらした影響を都内現役タクシードライバーの私が現場目線でリアルな現在のタクシー事情をお伝えしたい。
文/森吉雄一
写真/Adobe Stock(Savvapanf Photo ©@Adobe Stock)、TOYOTA
※森吉雄一:元全日本ジムカーナドライバー。引退後はドラテクだけでなく、車両の分析力・セットアップ能力を買われ、チューニングショップやパーツメーカーのデモカー開発やタイムアタッカーとしても活躍。現在の本業は都内タクシードライバーという生粋のプロドライバー
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■営業車を凍結! 営業所はまるで解体屋に!?
最初の緊急事態宣言発令時、私が勤めているタクシー会社の対応は早かった。休んでも一定分給料が支払される雇用調整助成金を利用して、例えば12出番のうち6日出番6日有給休暇という具合に従業員の出勤日数を減らし、普段2人ペアで使っている1台のタクシーを3~4人のドライバーで回すことで稼働を50%程度まで落とした。
これにより残った営業車は車検を切りナンバーを返納し一時抹消(廃車)した。結果営業所にはまるで解体屋のようにナンバープレートがない車両がびっしりと並べられ、異常な雰囲気を醸し出していた。これは税金を含め少しでも維持費を安くするのが狙い。こういった出番調整や営業車の処理は各タクシー会社でそれぞれ違いがあり、中にはテレビでも話題になった全員解雇や完全休業とした業者もあった。
こうして都内を走るタクシーの台数自体が減ったことで、お客さんも少なくなったが、日によっては今まで以上に売上が伸びるケースも報告されている。
この時点ではコロナ渦を乗り越えて行く上で非常に有効な方法だと思えたが、のちにこの手法が自分たちの首を絞めることになる。
秋ぐらいから人の流れが活発化し、金曜日などはコロナ過前の売上に近づく日も多くなったため、ここぞとばかりに一気に営業車を再登録、フル稼働を始めたところで再び痛恨の緊急事態宣言。
逆に金曜日はタクシーが多すぎて売上が下がってしまう現象が起きてしまった。ここで戦後からタクシー業界でスタンダードだった隔日勤務に変化が見られるようになった。
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