■新型M3のトピックは4WDモデルの投入
さて、新型M3モデル最大のトピックといえるのが今秋以降に追加予定の4WDモデルM XDriveだ。2018年にデビューしたM5と同じように4WDモード、4WDスポーツモード、2WDモード(後輪駆動)を切り替えられる制御となるはず。
したがって通常のXDriveとはロジックが大きく異なるのでそのハンドリングは楽しみ。そしてこのXDriveの採用によってトランスミッションがATベースの8速となることだ。つまりDCT(ツインクラッチ)ではない。
ファンとしては落胆するかもしれないが、アルピナB3にも8速ATが採用されていてしかも独自チューンを施したXDrive。B3の試乗で感じたのはATとはいえDCTに劣らないシフトスピードとダイレクト感。逆に市街地などでの扱いやすさはトルコンの強みだ。
また新型M3にはADAS(運転支援)のACC+LKA(レーンキープアシスト)が標準装備される。単にサーキット嗜好の究極パフォーマーではなく行動移動の快適&安全性を兼ね備えたモデルに進化しているといえるだろう。
■初代~新型 歴代BMW M3の系譜
さて、M3モデルのこれまでを少し振り返ってみよう。なんといってもルーツは初代M3(E30型)だ。筆者も戦ったグループAで1980年後半から1990年前半に活躍した。
直4 自然吸気2.3Lで約300ps(べースモデルは195ps)を1トン前後の軽量ボディに乗せ、ハンドリングはちょっとしたサスペンションアジャストでハッキリ変化するフォーミュラーカーのようなマシンだった。
後にエボリューションで2.5Lモデルが追加されたが、2.3Lエンジンの高回転でのキレが忘れられない。筆者のレーシングキャリアの中で、自分を鍛えてくれた忘れられないモデルだ。
M3はこのE30型で1990年一旦終わりを告げる。第2世代M3として復活するのは3年後の1993年のE36型 M3だ。こちらは自然吸気の直6 3.0Lとなった。E36型3シリーズは筆者もオーナーとして普段使いしたが、高速安定性とバランスに優れたモデルだった。
その2代目M3はE30型ほどの俊敏性はなかったが、追加導入された3.2Lエンジンは321psを発生しリッター当たり100ps越え。セミオートマと呼ばれたシングルクラッチの6速SMGトランスミッションを搭載し、パワフルさと直6の扱いやすさの両方を達成していた。
このE36型M3は1998年に生産終了。それから2年後の2000年に第3世代となるE46型M3が登場する。エンジンはさらにパワーアップした直6 3.2Lをキャリオーバー。トランスミッションもSMG IIへと進化している。
また、アメリカンルマンシリーズ用マシンのホモロゲ取得のためのV8 4.0Lエンジン380psを搭載したM3 GTRが10台限定で発売された。このモデルが2007年から登場する第4世代(E90/E92/E93型)M3への引き金となり全車4.0LのV8エンジンを搭載することとなる。つまりM3から直6エンジンは消えるのだ。
パワーは420ps。7速DCT(ツインクラッチ)トランスミッションも追加される。パフォーマンス的にはスバラシイが、やはりV8モデルは重さが影響し、筆者としてはそれほど印象に残るモデルではなかった。
そして2014年先代モデルとなる第5世代M3がデビュー。V8エンジンを止め直6エンジンのみとなったのは記憶に新しいところ。しかもツインターボで武装し431psを発生。7速DCT、カーボンプロペラシャフト、ロアサスボディー直付けなどサーキットに特化したモデルとして生まれ変わった。
M3には長い歴史がある。ガソリンエンジンによる究極のパフォーマーをさらに進化させているBMWに賞賛を送りたい。
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