免許を保有する高齢者の割合が年々増え続けている。そして高齢ドライバーによる交通事故も近年は増加傾向にあり、大きな社会問題になっている。
2020年、交通事故による死者は過去最少を更新したが、65歳以上の高齢者の死者数は56.2%に高止まりしている状況だ。さらに日本では少子高齢化がますます進んでいくと予想され、高齢者による交通事故は増加することが懸念される。高齢ドライバーの事故対策が重要だ。
では、この高齢ドライバーによる事故を防ぐには、どうすればいいのか? ここではその対策について解説していきます。
文/諸星陽一
写真/Adobe Stock(kazoka303030@Adobe Stock)、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】高齢者運転による事故の悲劇をなくすにはどうすべきか ?
■個人だけでなく、社会全体の問題
高齢者の交通事故が大きな社会問題となっています。これをどう克服するかは、もはや個人個人の問題ではなく、社会システムとしての問題と言っていいでしょう。
私はまずは高齢者が安全に運転できるためのクルマ、高齢者が安全に運転できるための運転法、高齢者が安全に運転できるための社会インフラ、が大切だと思っていますが、運転ができない状況であるのに免許証を保有したままの方もいます。そうした場合、どうすればいいのか?
現実的な対処法とこれからの社会が目指すべき方向性を考えていきたいと思います。
■運転することが難しい高齢者はどうする?
まずは正確な運転ができないほどの体調不良や老化、認知症の発症などを起こしている方の運転をどう止めるか? についてですが、これはもう無理矢理にでも止めるしかありません。その理由は明白です。
事故となれば、自分だけでなく他人にも迷惑を掛ける可能性があるからです。的確な操作ができなかったり、操作を誤ったりして、人身事故を起こしてしまったら、おおごとですのでまずは運転を止めなくてはなりません。
こうした場合、運転免許証を返納してもらうだけではダメです。大切なのは物理的にクルマの運転ができなくなるようにすることです。というのも、認知症を発症していると免許を返納したこと自体を忘れてしまうことがあり、そこにクルマがあって当人がクルマのキーを持っていれば、運転してしまう可能性があるからです。
当人しか乗っていないクルマであれば売却する、もしくは廃車するといった方法を取るのが一番です。そのクルマが家族で使っているならば、当人が運転できない方法を考えましょう。
キーを渡さないのはもちろんですが、どこかにキーを置いておくとそのキーを持って運転をしてしまうかも知れません。盗難防止用のステアリングロックなどを取り付け、そのキーを首からぶら下げて肌身離さずいる……、というくらいの強い意志と行動が必要でしょう。
そこまで? と思うかも知れませんが、家族が他人を傷つける可能性がある、最悪の場合は殺してしまう可能性もあると考えれば、やむをえないでしょう。
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