【後編】佐藤琢磨×原田哲也対談 「ところで、いつまでレースするの?(笑)」「いつまでやりましょうね?」

僕は現役だから、今起きてること、今の苦悩を伝えられるんです

──佐藤さん、43歳の今もレースを続けられるモチベーションの源は?
佐藤 体がすごく大事。哲也さんは現役最後の方、体の痛みがあったから「乗りたい」と思えなくなってたんですよね?
原田 そう。辛くなっちゃうんだよね。お金をもらって走る以上はプロなのに、体が辛くて結果が出せなくなったら、もうやっててもしょうがないからね。
佐藤 自分としても許せなくなっちゃいますよね。僕はまだ車に乗ると、「走りたい、走りたい!」って体が騒ぎ出すんですよ。今はたくさんの経験を積んだので、頭がそれを抑えてくれるようになったけど(笑)、体はまだ行きたがるんですよ。
 回復力なんかは10代とは違いますけど、ドライビングするってことに関しては今も前進している感覚を自分はまだ持っていて、幸いなことも目もよく見えてるし……。これが何か体のバランスが崩れてきて、自分の中で自分らしく走れなくなった時は、年齢に関わらずスッと降りると思います。
 そしたらバイクにも乗れる(笑)。
原田 そうなったら一緒に四輪の耐久レースに出ようよ。
佐藤 めちゃめちゃ楽しいと思います(笑)。
原田 カートでもいいし、四輪の気軽なレースもいっぱいあるから。
佐藤 あります、あります。モータースポーツの普及って意味では、哲也さんと僕で二輪と四輪を行き来できたら楽しいですよね。哲也さんはご自分でスクールをやってるし、僕も復興支援の一環として「Kids Kart Challenge」を続けられてるから、それらを全部ひっくるめたら確かにいろんなことができるかもしれない。

2020年インディ500で優勝した佐藤琢磨選手
2020年インディ500で優勝した佐藤琢磨選手

 昔は「自分が、自分が」って走ってきましたけど、ホンダさんのスクールを卒業してホンダさんのエンジンでずっとやってきて、このモータースポーツ界に貢献したいと思えるんですよね、本当に。
 スクールをやってても指導は現場のコーチやプロのドライバーたちに任せてますけど、現役の僕だからこそ伝えられることもあると思ってるんです
原田 特にメンタリティがね……。上のカテゴリーで勝ったことのある人と、勝ったことのない人とではメンタリティが違う。実際に勝ってる琢磨みたいな人がいろいろ伝えてあげると、教わる方の子供たちの受け止め方が違うと思うんだよね。
佐藤 それって今しかできないな、と思ってるんです。確かに今まで経験したことを語ることもできるけど、それだと近所のおじさんが「勉強しろよ」って言ってるのと変わらない(笑)。
 でも僕は現役だから、今起きてること、今の苦悩を伝えられるんです。インディ500の姿もありますけど、毎回なんてレースで勝てない。その苦しみを、僕と同時に感じてもらえる。言葉も通じない相手の中でやってること、「日本人ここにあり!」っていうのを見せたいし、そうやって勝つ姿も見てもらいたいですよ。
原田 現役の言葉には説得力があるもん。
佐藤 そこは強みかなと思います。でも……、現役終わってからも楽しそうだな(笑)。

2021年はインディ500を観に行きたいね

原田 なんでオレの顔見て言うんだよ(笑)。
佐藤 だって、なんかいっぱい楽しそうなことしてるんだもん。僕はモナコでいっぱい楽しいことを教えてもらったから、現役終わったらまたいろいろ教えてもらおう(笑)。
原田 いや〜、今オレはめっちゃ楽しんでるよ、悪いけど(笑)。人生楽しんでるよ。
佐藤 素晴らしい!(笑)
原田 でも琢磨はまだまだやりたいことがあるだろうから、頑張って現役を続けてもらってさ。自分が好きなことができるって、1番幸せだよね。
佐藤 全力で行きます!
原田 全力でやってください。2021年はインディ500を観に行きたいね。
佐藤 哲也さん、久しく僕のレース観に来てないでしょう? 2007年のF1モナコGP以来かな。
原田 そうなんだよね。それにインディカー自体を生で観たことがないんだよ。行きたいね。行こっかな(笑)。
佐藤 2021年は確実に走ってますから。その次は分かんないけどね(笑)。コロナ禍がどうなってるか分かんないけど、インディ500が開催されるならぜひ来てほしいな。
 席は用意しておきますよ(笑)。世界のレースを知ってる人が観れば「面白い!」と思ってもらえるはず。いろんなことをいっぱい感じると思うんですよ、インディアナポリスで。哲也さんの感想を聞いてみたいです。
原田 ぜひ! 今回はお忙しい中、ありがとうございました。
佐藤 いえいえ。またおいしいもの食べに行きましょう!
原田 行こ! 飲み行こ!
佐藤 じゃ、このまま行きますか?(笑)

原田哲也■1970年生まれ。1980年にポケバイレースでキャリアをスタート。ミニバイクレースを経て1986年にロードレースに転向し、1992年に全日本ロードレースGP250ccクラスでチャンピオンに。さらに翌1993年にはWGP250ccクラスで日本初のタイトルを獲得した。WGP通算17勝、表彰台55回という日本人最多記録を残して2002年に引退。現在は趣味としてバイクを楽しむ。

佐藤琢磨■10歳で初めてサーキットに行き、モータースポーツの魅力に取り憑かれるも19歳まで自転車競技に没頭。以降四輪レースに飛び込むや頭角を現し、イギリスF3を経て2002年~2009年はF1ドライバーとして活躍。2010年からインディカーにスイッチし、通算6勝。2017年には世界三大レースのインディ500で優勝し、2020年、2勝目の快挙を遂げた。

【画像ギャラリー】原田哲也氏が佐藤琢磨選手のインディ500優勝をお祝い! 2020年のレースシーンも

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