楽しい…楽しいよ…(涙)純エンジン車の魅力を味わう厳選4台と最後の旅


■各社それぞれの魅力が宿るエンジンたち

 S660の直3、658ccターボからはこのようなサウンドは聞こえませんが、加速時のシフトアップでのアクセルオフ時に頭の後ろから聞こえる“プシューン”というターボ系のサウンドが聞こえて、これが楽しくて、ついついエンジンを回してしまいます。

 この3気筒エンジンが7500rpmを超えて回ろうとする感覚も純エンジン車ならではの魅力です。

 トルクゾーンはもっと低い回転域にあり、6000rpmあたりがパワーゾーンのピークではありますが、タイトなコーナーの連続するようなシチュエーションで、立ち上がりから次のコーナーへの進入までの加速で、シフトアップをせずにエンジン回転の「余力」を使えるので、結果的に速く走れます。

 絶対的なパワーはGT-RやLC500には遠く及ばぬエンジンですが、ドライブする楽しさはまるでバイクのようで楽しいものです。

世界最小ガソリンターボスポーツ、ホンダ S660(232万1000円)…エンジン本体は排気量658ccの直3ターボの、いわゆる軽ターボだが、これをミドに搭載したS660の走りは純エンジン車ならではの魅力にあふれる

 アルピーヌA110Sのエンジンは、直4、1.8Lターボの気持ちのいいエンジンです。

 このエンジンによって、1110kgの軽量ミドシップのハンドリングがさらにシャープで軽快に楽しめます。

 6700rpmあたりがレッドゾーンなのですが、加速していってレブリミットに到達すると、いきなりリミッターが作動するのではなく、緩やかにトルクを間引きするように回転を抑えます。この制御もいい。

 エンジンのトルク変動がダイレクトに荷重移動に影響する“緩みのない”シャシーなので、コーナリング中にレブリミットに当たった際の挙動変化が出ないのです。

 フロントが軽く、操舵に対する車体の反応がシャープなA110だけに、こうしたエンジン側の制御は嬉しいです。

エンジンが生み出す珠玉のハンドリング アルピーヌ A110S(864万円)…メガーヌR.S.と同系の直4、1.8Lエンジンは「A110S」では292ps/32.6kgmのパワーとなる。1110kgの軽量ミドシップで、ハンドリングの魅力を味わえる

 それにしてもA110のシャシー性能は素晴らしいです。

 ほんのちょっとの操舵に対し、シュッとノーズは反応するのに、リアはしっかりと粘って姿勢を乱すことはない。

 意図的に右へ左へとすばやい切り返しをすれば、若干リアが滑る様子を見せるものの、スパンとリバースしてスピンモードになることはなく、あくまで安定を失いません。

 よく曲がりますが、A110のステアのギア比はそれほどクイックではありません。

 前輪の切れで無理やり曲げているのではなく、しっかりと接地させたタイヤのグリップでノーズを入れています。

 レクサスのV8エンジンは、よくぞ今の時代、生き残ってくれていると、感謝したいです。

 最新の燃焼技術などを導入し、伝達効率に優れる10速ATを組み合わせているとはいえ、WLTCモード燃費は8.0km/L。

 GT-R NISMOのモード燃費は公表されていませんが、標準GT-RはWLTCモード7.8km/Lで、ともに時代に逆行するエンジンであることは否定できません。

 でも、走れば楽しい! LC500の2UR-GSEは総排気量4968ccのV型8気筒だというのに、7400rpmまで一気に吹け上がっていきます。

 しかもよどみなく、パワー感は回転に応じて直線的に盛り上がります。

最後の国産V8 NAスポーツ、レクサスLC500コンバーチブル(1500万円)…今となっては極めて貴重な存在となったV型8気筒エンジン。LC500の2UR-GSEは7000rpm以上回る痛快なV8。477ps/55.1kgmでパワフル!

 このエンジン、5000rpm以下ではとてもジェントル。音も静かだし振動もなく滑らか。ラグジュアリーオープンのエンジンにはふさわしい上質感です。

 しかし、5000rpmを超えると豹変。昔のホンダVTECのように、音が“カーン”と甲高くなり、アクセルに対するレスポンスも一段とシャープになります。

 シフト時の“パパンっ”というサウンドなど、アメリカのNASCARのような感覚です。ちょっとほかの日本車では聞くことができないエンジンサウンドです。

 そして凄いのが、この477ps/55.1kgmのパワー&トルクをオープンボディがミシリともせず受け止めているということ。

 ボディ剛性もさることながら、足がとてもいいのが運転していて実感できます。

 21インチの大きく重いタイヤをしっかりと受け止めて、しなやかにサスペンションが動いて衝撃を吸収しています。

 普通に走っている時の乗り心地のよさは特筆ものです。まさにラグジュアリーオープン。

 フルブレーキング時のノーズダイブも少なく、リアタイヤの制動力をしっかりと使っていて、安心感が高く、大パワーを安心して引き出せます。

 GT-RのNISMOは徹底的にレーシングマシンのような内外装です。

 タイヤの接地感はまるでスリックタイヤのような感覚です。トレッド面が硬く、接地面積が大きいタイヤの乗り心地です。

ターボスポーツの最高峰、日産 GT-R NISMO(2420万円)…総排気量3799ccのV型6気筒ツインターボは、2007年のデビュー以来、着実に改良を繰り返し、まさに珠玉の名機と呼ぶにふさわしい日本が世界に誇るエンジン

 タイヤもダンパーも固く乗り心地はガッチリしていますが、タイヤが路面に吸い付いているかのようで、安心感は高いです。

 ゆっくり走らせていても、後ろから盛大なギアの音が聞こえてきます。

 トランスアクスルの6速DCTの“ギュイ~ン”という音が、車速に伴ってさまざまに鳴り響きます。ギアのオーケストラですね。

 3799ccのV6ツインターボは全域トルクバンドのような感覚で、どこから踏んでもドカン! と前に出ていく。

GT-R NISMOは徹底的に「走る」ことを追求したクルマなのだということを再認識

 変なトルク変動や急にパワーが炸裂するといったことがないので、全開加速では凶暴なまでの動力性能を発揮しますが、扱いやすさを失いません。

 ものすごくフレキシビリティのあるエンジンです。珠玉の内燃機関と言っても過言ではありません。

 これを市販車で味わえるのは、本当に今がラストチャンスになってしまいそうです。

 今回改めて乗った4台。どれもエンジンとシャシーのバランスが絶妙で、官能的で魅力的な純エンジン車だと再認識しました!

山野哲也氏は電動化に対して否定的ではない。自身はパイクスピークヒルクライムにEV仕様のNSXで参戦した経験もあり(次写真)、EVの魅力、パフォーマンスも存分に理解している。→
→そのうえで、「それでも純エンジン車には独特の魅力がある」と言っているのだ

【番外コラム】純エンジン車の未来は本当にないのか?

 内燃機関の終わりの始まりは、ユーザーが「EVのほうがお得だな」と思えるようになった時。それには先進国で最低10~15年、途上国だとその倍くらいの時間がかかるだろう

 最近は技術の進化が早いから、10年経ったら世の中がびっくりするほど変わってたというケースがままある。

 例えば、初代iPhoneが発表されたのが2007年、ソフトバンクがiPhone3Gを初めて日本に導入したのが2008年。

 もはや、スマホなしの生活なんて思い出せないくらい昔に思えるけれど、たった10年ちょい前の話なのだ。

 だから、クルマの動力が電気に置き換わったら自動車業界の勢力図が劇的に変わるという説には、一定の説得力がある。

 テスラに続いて異業種から参入するEVメーカーが増え、自動運転やカーシェアリングの普及によってクルマの価格や保有コストは劇的に下がる。

 AppleやGoogleがEVを作ろうって時代に、いつまでも内燃機関にこだわってたら家電やスマホの二の舞でジリ貧ですよ。そんなことを言う人すら少なくない。

 でも、果たしてソレって本当なんだろうか?

 確かに、新しいテクノロジーの登場で滅びた製品はたくさんある。レコード→CD、フィルム→デジカメ、VTR→デジタルムービー、ガラケー→スマホなどなど……。

 しかし、よーく考えてみてくださいな。これらはすべてIT業界における栄枯盛衰だよね?

 音楽も映像もムービーも昔はアナログ記録。それが、デジタル技術の発達でより自由に加工/保存できるようになり、その結果としてデジカメやスマホのような新しい商品が生まれた。

“データ”にはカタチも重さもない。だからこそ「半導体の性能は2年ごとに2倍になる」というムーアの法則に則って劇的なコストダウンと性能向上が可能だったのだ。

 ボクは、こういう“破壊的イノベーション”がクルマ業界で起きるとは思わない。

 もちろん、カーボンニュートラルまであと30年。純粋内燃機関車の販売停止まであと15年。この世界的な流れはもはや決定的と言っていい。

 これからの自動車メーカーは、いかにCO2排出量の少ないクルマにシフトしてゆくかがメインテーマ。電動化がその最重要課題なのは疑う余地がない。

 しかし、だからといって内燃機関すべてが短時間のうちにEVに置き換わるかといえば、原理的にも商業的にもそんなに簡単じゃない。

 バッテリーの性能(エネルギー密度や充電能力)はまだとても内燃機関には及ばないし、EVをリーズナブルな価格で大量に供給するには、それがビジネスとして成り立つためのコストダウンが不可避。それには、おそらく10~15年はかかるだろう。

ハイブリッド用内燃機関の進化は続くが、純エンジン車の先ゆきは不透明。今のうちに乗っておくか!

 デジタル業界ではビジネスモデルをガラッとひっくり返すような革命的変化がしばしば起こったが、その原動力となったのはデジタル技術の進化によるコストダウン。どちらが欠けても革命は起きなかったと思う。

 ボクは、あと20年くらいは内燃機関とEVは切磋琢磨しつつ共存すると考えているが、そこで最も注目しているのは双方のトータル保有コストがどこで逆転するかだ。

 自動車のような高額商品の場合、自分のお財布からお金を払うユーザーは実にシビア。そんなに簡単に新しいものに飛びついたりしない。

 プリウスだって本当に売れたのは3代目以降で、燃費性能だけではなく、バッテリーの耐久性やリセールバリューについての不安が解消されてから。そこでようやく普通のユーザーがどっと購入に走ったのだ。

 EVについても同じ。補助金など各種優遇措置の有無や充電インフラの整備なんかも関係するが、普通のユーザーが「こりゃどう考えてもEVのほうがお得だな」と思えるようになった時が、内燃機関の終わりの始まり。

 前記のとおり、それには先進国で最低10~15年、途上国だとその倍くらいの時間がかかると見ている。

 皆さんはどう思いますか?

(TEXT/鈴木直也)

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