実はデメリットのほうが多い? なぜ高速道路のETC専用化を進めるのか

■ETC普及率100%が実現しない理由

混雑時の料金を高くし、閑散時を安くする「日別・時間帯別料金制」実施のためには、必ずしもETC専用化が必要なわけではない
混雑時の料金を高くし、閑散時を安くする「日別・時間帯別料金制」実施のためには、必ずしもETC専用化が必要なわけではない

 国交省はいったいなぜ、ETC専用化を進めようとしているのか。その目的は、以下のようなものである。

〜国土幹線道路部会中間とりまとめ(令和2年9月25日)等にあるように、ETCを活用することにより、

(1)戦略的な料金体系の導入が容易になること等を通じた混雑の緩和など利用者の生産性の向上

(2)将来的な管理コストの削減

(3)高速道路内外の各種支払における利用者利便性の向上

(4)料金収受員の人員確保が困難な中での持続可能な料金所機能を維持

(5)料金収受員や利用者に対する感染症リスクの軽減

 「戦略的な料金体系の導入」とは、日別・時間帯別料金のこと。混雑時の料金を高くし、閑散時を安くする機動的な料金とすることで、交通量の平準化を目指すものだ。しかしこれには、必ずしもETC専用化が必要というわけではない。距離別料金が導入済みの首都高や阪神高速では、現金客からは上限料金を徴収しているが、NEXCOの高速道路でも、現金客からは最も高い時間帯の料金を取るようにすればそれで済む。

現在、取り付け工賃込みで1万~1万5000円程度で装着が可能となったETC車載器。ETC2.0なら2万5000円~といったところ
現在、取り付け工賃込みで1万~1万5000円程度で装着が可能となったETC車載器。ETC2.0なら2万5000円~といったところ

 現在でもETCを利用していないユーザーは、その多くが確信犯(犯ではないですが)と推察する。どうしてもクレジットカードを作りたくないとか、作れないとか、履歴が残るのが嫌だとか、滅多に高速に乗らないからETC車載器を付けるのはムダとか、そういった理由により、積極的にETCを避けているのではないか。そういうユーザーに、車載器を付けてもらってETCカードを発行してもらうのはなかなか大変だ。

 2021年3月までのETC新規セットアップ件数は、累計で7451万台。これには廃車になった台数(恐らく1000万台強)も含まれている。日本の自動車保有台数は合計8185万台。つまり、約1500万台にはETC車載器が搭載されていないと推測される。

 その対策として国交省は、車載器助成や、ETCパーソナルカードのデポジットの下限の引き下げ等によるETCの利用環境の改善を打ち出しているが、効果はおそらく限定的で、高速道路会社が減収になるのは避けられない。仮に新車へのETC車載器取り付けを義務化しても、普及率100%にするには20年といった歳月が必要だし、ドライバーがETCカードを持っていなければそれも無意味となる。

■目的もあいまいで、専用化実現への道のりは遠い

高速道路の料金所に短い列ができることはあるが、料金所“渋滞”はほぼ解消されている
高速道路の料金所に短い列ができることはあるが、料金所“渋滞”はほぼ解消されている

 非ETC車の誤進入対策も難問だ。NEXCOのスマートICは、非ETC車用が誤進入した場合のUターン路が設けられているが、通常の入口にはない。国交省は、ナンバーを読み取ることで後日請求するシステムを構築する方針だが、そのコストのほうが、当面はETC専用化による合理化コストを上回る可能性もある。

 よって、(2)の将来的な管理コストの削減も、遠い道のりだ。(3)については意味すら不明。(4)については、料金所収受員の多くがシルバー人材であり、今後ますます高齢者人口が増加することを考えると、人員不足に悩む事態は考えにくい。(5)に関しては、現在は確かに課題だが、5年後、10年後も新型コロナが問題になっているとは思えない。

 国交省は「コスト差を踏まえたETC利用車への還元策」も検討するとしているが、前述のように、ETCと非ETCの管理コスト差は、利用1回あたり100円程度。ETC車には現状すでに各種割引があり、その差は十分還元されている。「将来的な本線料金所の撤去」も謳われているが、これまたETC利用者にはほとんどメリットはない。

 高速道路のETC専用化は、一見合理的に見えるが、考えれば考えるほどメリットに対してデメリットが大きいと言わざるを得ない。

【画像ギャラリー】国交省はなぜ高速道路のETC専用化を進めるのか

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