国交省は2020年12月、ETC専用化等による料金所のキャッシュレス化・タッチレス化について 、「都市部は5年、地方部は10年程度での概成に向けたロードマップ」を発表した。※国土交通省『ETC専用化等による料金所のキャッシュレス化・タッチレス化について』
まずは今年度中から、首都圏(首都高および圏央道の内側区間)と阪神高速で、一部料金所のETC専用化が始まる。具体的には、首都高では30か所程度、圏央道の内側のNEXCOの料金所で数か所、阪神高速で5か所程度がETC専用化されるという。
昨年開通した首都高横浜北線の馬場入口は、首都高初のETC専用入口。今後、現状一般レーンが設けられている入口も、順次ETC専用化されていく。しかしこのETC専用化、メリットはどこにあるのだろうか?
文/清水草一 写真/フォッケウルフ、本田技研工業
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■一般レーンを通る7%のクルマをどう捉えるか?
現在ETCを利用しているユーザーは、ETC専用化されようがされまいが、利便性には変化がない。一般レーンが混雑していてETCレーンの邪魔になることもまずないので、ETC専用化のメリットはほぼゼロ。その一方で、一般レーンを使っている非ETC車は、高速道路を使えなくなるのだから、デメリット満点だ。
高速道路会社側にも、大きなメリットがあるとは思えない。令和3年3月のETC利用率は、全体で93.1%。道路会社別に見ると、最も高い首都高で96.5%となっている。ETC利用率は、100%にかなり近づいているが、それでも全体でまだ7%ものクルマが、一般レーンで現金等(クレジットカード払いも可)によって支払っている。
高速道路会社6社を合計すると、年間料金収入は約3兆円。その7%は単純計算で約2000億円になる。仮に今すぐすべての高速道路をETC専用化すると、それだけ料金収入が減ることになり、維持管理や建設費の償還計画(借金の返済)にも影響する。
「それくらい、料金所の係員の合理化でなんとかなるんじゃないの?」と、思われるかもしれないが、料金所にかかる人件費などのコストは意外と小さい。ETC車と非ETC車の管理コスト差は、利用1回あたり100円程度。年間利用台数は合計約40億台だから、その7%は2億8000万台。それに100円をかけても280億円にしかならない。
また、ETC専用化しても、ETC機材トラブルの際などに対応する係員が必要なため、料金所の係員をゼロにできるわけではない。首都高をETC専用化した場合、係員をどこに配置するかについては、現在と同じくブース内にするか、他の場所(詰め所等)で待機するか未定だが、もともとブースに1名いた係員が別の場所に移動するだけなら、人件費の削減効果はゼロ。つまり、コストは減らずに料金収入だけが減ることになる。
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