本誌『ベストカー』で毎号連載を重ねている、自動車評論家・プロドライバー国沢光宏氏の「クルマの達人になる」。
今回のお題は「電動キックボード」。シェアリングサービスなどもあり国内でも普及がすすむ電動キックボードだが、「いまのままじゃマズい!!」と危機感を募らせる国沢氏。
いったい電動キックボードの何が問題なのか? 日本の道路事情も踏まえた上で解説してもらった。
※本稿は2021年6月のものです
文:国沢光宏 写真:Adobe Stock
初出:『ベストカー』2021年7月26日号「クルマの達人」より
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■いまのままだと電動キックボードの事故は急増する
何を隠そう私は電動キックボード評論家だったりする。
自分でもセグウェイの『ナインボットE22』を持っているし、アメリカやヨーロッパ、シンガポールなどで街中を走り回ったこともあります。
電動キックボードの便利さや、楽しさ、危険性、問題点など相当詳しいつもり。
ということを前提に昨今の我が国における電動キックボード事情を見て、激しい危機感など味わっている。
このままだと電動キックボードの事故が急増すると断言しておく。
まず電動キックボードの操縦性について紹介してみたい。
車体構造を見ればわかるとおり、極めて車輪が小さい。車輪は小さいほど安定性低くなっていく。
ジャイロ効果不足による安定性の低さだけでなく、路面の凹凸を通過する際のワンダリングも強烈に大きい。
目地を斜めに通過しようとすれば運がよくて左右に振られ、運悪いと前輪を持っていかれて転倒する。
グリップの低い鉄のマンホールの蓋も手強い。濡れている路面だと、前輪ブレーキかけたら前輪から滑って転倒してしまう。
海外でも転倒事故例は非常に多い。なかには30km/h以上出るような電動キックボードもあり、フルブレーキングして停止まで15m以上進んでしまう。
自転車で30km/h出して後輪ブレーキだけで急制動するようなイメージ。
前輪に機械式ブレーキが付いているモデルもあるけれど、車輪が小さくグリップ低いため、やはり短制動は厳しい。
左右方向の安定性についていえば、徹底的に悪い。
私のナインボットE22は海外でレンタルされるような評価の高いモデルながら、25km/h出すと50cm幅のラインをキープするのが精一杯。自転車よりはるかに左右方向へフラついてしまう。
荷物を背負うと、そいつのイナーシャ(慣性)で左右に振られてしまうほど。
スピード出したらカント(道路のアンジュレーション、起伏)のある公道でクルマの間を走ることなど無理。せいぜい15km/hくらいまでが安全を確保できる限度だと思う。
そんな安定性の悪い乗り物を、我が国は車道で走らせようとしているようだ。
すでに実証試験を行っている地域もあり、バスのすぐ横を走っているような姿を見ていると恐ろしくなる。
道路の左側、すでに自転車とスクーターで殺し合いのようになっているのに、電動キックボードまで乱闘に加わる。
逆走してくる自転車と左右の安定性悪い電動キックボードとの戦い、いやすれ違いは超シビアだと思う。
少しコントロールを乱しただけで正面衝突だ。
さらなる課題は、免許や登録制度、最高速などの規定がわかりにくいこと。
現在検討されているのは、
❶6km/hなら歩行者扱いで免許も登録も不要。
❷15km/hまでなら軽車両扱いで免許も登録も不要。
❸15km/h以上出るなら原付免許。登録必要というもの。
一番問題になりそうなのは❷。最高速をどうやってチェックしたらいいか難しい。
25km/hで自転車のように好き勝手に走られたら街中にコントロールできないミサイルがたくさん飛び回るのと同じです。
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