東京2020大会が終われば、いよいよお盆休みがスタート。お盆シーズンといえば、例年、主要高速道路において大渋滞が起きる時期でもある。都心部を中心に緊急事態宣言は発令されているが、現状を見るかぎりその人流抑制効果もあまり期待できそうにない。
昨年はコロナ禍ということもあってNEXCO各社は渋滞予測を発表しなかったが、果たして今シーズンの渋滞はどうなるのか? また、7月に運用が開始されたばかりの東名高速大和トンネル拡幅の影響は? お盆休み最中のこの時期に、交通ジャーナリストの清水草一が分析する!
文/清水草一 写真/清水草一、フォッケウルフ、NEXCO中日本
■お盆休みの渋滞は昨年と比べてどうなるか?
東京オリンピックと入れ替わるようにして、お盆休みがやってくる。東京都など首都圏4県には緊急事態が宣言されているが、もはや人々の行動を抑える効果は小さい。NEXCO各社は、新型コロナ発生以後、渋滞予測を発表していないが、首都圏の高速道路ではかなりの渋滞が発生するだろう。
では、どれくらいの渋滞になるかというと、平常時(新型コロナ以前)よりは少なくなるものの、長期分散型の渋滞になると私は予想する。帰省に関しては、地元民の目をはばかってまだ控えるという人も多いだろうし、宿泊を伴うレジャーも平常よりは少なめだろう。しかし、日帰りレジャーが増加し、今年のGW渋滞くらいの規模になるのではないか。
今年(2021年)のGW渋滞がどれくらいのものだったのか。NEXCO中日本によると、交通量は2019年と比べて約4割減少、10km以上の渋滞回数は、2019年と比べ約8割減少だった。渋滞が例年の8割減と言えば大激減だが、新型コロナの影響で渋滞が消滅に近い状況だった時期があったため、久しぶりに渋滞を見ると、「うわ、混んでる!」と感じてしまう面がある。
ただ、日帰りレジャーが中心なので、渋滞の開始時間は例年より遅めになる。下り渋滞を避けるなら、早く出発するだけで、かなりの回避効果が見込めるだろう。上りに関しては、うんと早く帰るか、逆にめいっぱい遅く帰るのが吉となる。
■拡幅されたのは日本一の渋滞ポイント!
ところで、全国の高速道路で渋滞ワーストポイントと言えば、東名高速の「大和トンネル付近」だ。国土交通省が発表した2019年の渋滞ワーストランキングによれば、海老名JCT→横浜町田IC(上り)がワースト1位(渋滞損失時間171.5万人・時間/年)。横浜町田IC→海老名JCT(下り)がワースト4位(渋滞損失時間110.6万人・時間/年)だった。どちらも渋滞の先頭は「大和トンネル付近」。まさにドライバーの鬼門である。
その大和トンネル付近は、渋滞緩和のための拡幅(付加車線設置)工事が行われているが、2021年7月14日、そのうち名古屋寄りの一部が完成、運用が始まった。拡幅されたのは、上り線4.2kmのうち2.7km、下り線4.5kmのうち1.8km(ともに名古屋寄り)だ。なぜ名古屋寄りだけ完成したかというと、東京寄りには高架区間があり、その部分に関しては、どうやって拡幅するか、まだ設計すら決まっていないからだ。
また、この拡幅は、大和トンネル付近を部分的に拡げるのみなので、果たしてどれくらい効果があるか、私は以前から疑問視していた。少なくとも日本一の渋滞ポイントである上り線に関しては、海老名JCTから横浜町田ICまで、全線4車線化する必要があると主張していた。
とは言うものの、とにもかくにも部分拡幅が完成した。その効果はどの程度のものか。7月14日以降の状況を見ると、下り線に関しては「ほぼ効果なし」、上り線は「若干効果あり」である。
下り線で拡幅効果がないのは、肝心のサグ(くぼ地という意味で、自然渋滞の先頭になるポイント)部が、大和トンネルよりわずかに東京寄りにあるから。つまり、渋滞が解消して流れ始めるあたりから1車線広がっているので、効果がないのは当たり前である。一方上り線側は、サグになるポイントは、ズバリ大和トンネル付近だった。そこが1車線広がったことで、大和トンネルを先頭にした渋滞は解消した(!)。
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