超個性派ミニバン! マツダ ビアンテが届かなかったもの【偉大な生産終了車】

■マツダの選択「ミニバン撤退」がなくてもビアンテは生き延びたか

 走りの良いミニバンであり、独特のフロントマスクは好き嫌いこそ分かれるでしょうが、なかなか個性的で意欲的なデザインであることは間違いなかったマツダ ビアンテ。

 そんなビアンテが1代限りで消滅してしまった理由は、前章の最後で申し上げたとおり「マツダがミニバン市場から撤退することを決めたから」です。

 トヨタや日産などと比べれば小さな自動車メーカーであるマツダは、巨大メーカーと同じようにすべてのカテゴリーの車を作るのは無理があると判断し、「選択と集中」を行うことにしました。

 日本市場に特化したガラパゴス商品であるミニバンを捨て、その代わりに、世界的な成長ジャンルであるSUVと、「デザイン性」という世界共通言語に賭けたのです。

 また他のSUVやハッチバックなどとは異なる「スライドドア付きのミニバン」は、どうしても工場の生産効率を下げてしまうから――という理由もあったようです。

ビアンテのベースとなったプレマシー。写真は2007年・2代目のもの。全長×全幅×全高は4505mm×1745mm×1615mm。2018年、ビアンテと同様マツダのミニバン市場からの撤退に伴い生産終了に至る
ビアンテのベースとなったプレマシー。写真は2007年・2代目のもの。全長×全幅×全高は4505mm×1745mm×1615mm。2018年、ビアンテと同様マツダのミニバン市場からの撤退に伴い生産終了に至る

 そのような理由でマツダのビアンテとプレマシーは同時期に販売終了となったわけですが……ここでひとつ想像してみたいと思います。

 もしも「マツダのミニバン市場からの撤退」がなかったとしたら、ビアンテはそのまま存続できていたでしょうか?

 ……その答えはもちろん誰にもわかりませんが、筆者は「結局、存続はできなかったのでは?」と考えています。

 その理由は、「当時のマツダは力の入れどころを間違えていた」と思っているからです。

 ここまで繰り返し述べてきたとおりマツダ ビアンテは、「当時の背が高いミニバン」としては良好な走行性能を有する車でした。そのため「ミニバンはまったく好きじゃないけど、子どもが生まれたので買わざるを得ない……」みたいなタイプのユーザーには、そこそこ選ばれていました。

 しかし世の中の大半の「5ナンバーサイズミニバンを購入するユーザー層」にとっては、走行性能の良さなどどうでもいい――とまでは言いませんが、少なくとも「最優先事項」ではありませんでした。

 走りの質感うんぬんよりも重視したいのは「カップホルダーの数や位置」であり、「シートアレンジの容易さ」と「車内の広さおよび高さ」だったのです。

 もちろんマツダも、ビアンテのそこには大いに注力したことでしょう。

 しかし「そもそもプラットフォームが背の低い乗用車用だった」ということもあって、また、たぶんですがマツダのエンジニアの「走りへのこだわり」のようなものも強くあって、「カップホルダーの数や位置」的な部分がやや弱くなってしまったのです。

 そこがビアンテの主な敗因であり、さらには当時のマツダのブランドイメージ(壊れそう。リセール価格が安そう)も、この車が苦戦した大きな理由のひとつではあるでしょう。

 しかしその後のマツダは――みなさんご存じのとおり――選択と集中によって素晴らしいデザインとブランドイメージを手に入れ、そしてもともとあった「走りへのこだわり」もいよいよ先鋭化し、昔とはずいぶん違うイメージの自動車メーカーとして受け取られています。

3代目デミオ(2011年)。CX-5とともに、マツダのフォードからの脱却、そして技術開発ビジョン「SKYACTIV」を軸としたマツダ新時代の象徴となってゆく
3代目デミオ(2011年)。CX-5とともに、マツダのフォードからの脱却、そして技術開発ビジョン「SKYACTIV」を軸としたマツダ新時代の象徴となってゆく

 そんなマツダが今後、もしもミニバンを作ることがあったなら――おそらくはビアンテよりもさらに素敵な一台になることでしょう。

■マツダ ビアンテ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4715mm×1770mm×1835mm
・ホイールベース:2850mm
・車重:1490kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1997cc
・最高出力:151ps/6000rpm
・最大トルク:19.4kgm/4100rpm
・燃費:14.8km/L(JC08モード)
・価格:256万5000円(2014年式 20S-スカイアクティブ)

【画像ギャラリー】ベースとなったプレマシーらとともに、マツダ ビアンテをギャラリーで見る(20枚)

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