毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はマツダ ビアンテ(2008-2017)をご紹介します。
文/伊達軍曹 写真/MAZDA
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■プレマシーベースをベースに! ビアンテ「歌舞伎顔」誕生の背景
いわゆる背の高いミニバンを持っていなかったマツダが、当時の売れ筋であった「背が高い5ナンバーミニバン」に対抗すべく作った、ロールーフミニバンの車台をベースとするハイルーフミニバン。
走りにこだわるマツダの車だけあって走行フィールは良好だったが、「本職」である他社の5ナンバーミニバンに売れ行きの面ではかなわず、マツダ自体の戦略変更もあり、1代限りで生産終了となった3列シート車。
それが、マツダ ビアンテです。
ボンゴフレンディが販売終了となって以降、マツダのミニバンはロールーフタイプのMPVとプレマシーがあるだけで、世間的な売れ筋であった日産 セレナやトヨタ ヴォクシー、ホンダ ステップワゴンのような「背が高い5ナンバーミニバン」はありませんでした。
そこで作られたのが、2008年7月に登場したマツダ ビアンテ。
背が低めの乗用車であるアクセラやプレマシー用のBKプラットフォームを使いつつも、「背が高い車」であることを成立させたミニバンです。
背が高いミニバン、具体的には全高1835mmにすると決定したのはいいのですが、ビアンテに使われたプラットフォームはアクセラやプレマシー用のものでしたので、背の高さに合わせてフロア高を上げることができません。
そのため、当時のマツダ車の特徴だった逆ペンタゴン型のフロントグリルを通常よりもグッと低い位置に配し、フロント部分のフォルムを極端なくさび形にしました。
そのうえで大型の三角窓も用意することで、背が低い乗用車と同じ着座位置であっても十分な視認性が確保できるようにしたのです。
また「歌舞伎顔」と言われたヘッドランプの形状も、低いボンネットと高いルーフの違和感をなくすために生まれたデザインでした。
計3列のシートは後方へいくにしたがってヒップポイントが高くなる「シアターレイアウト」で、後席乗員にとっては視界も開放感も良好なものでしたが、これも、床面が低いプラットフォームを使わざるを得なかったことによる“苦肉の策”ではあったのです。
発売当初のパワートレインは2Lまたは2.3L直4DOHC+5速ATでしたが(※4WD車は4速AT)、2013年5月のマイナーチェンジでSKYACTIV-G 2.0+6速ATに変更されました。
そんなマツダ ビアンテはシートアレンジも多彩で、冒頭付近で申し上げたとおり、いかにもマツダ車らしい「走行フィールの良い車」でもありました。
しかしその販売は今ひとつぱっとしないまま推移し、結局は2017年9月、マツダのミニバン市場からの撤退に伴って生産を終了。翌2018年3月には販売のほうも終了となりました。
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