本日9月14日、トヨタから新型SUV「カローラクロス」が発表された。これで、現行のトヨタラインナップにSUVが9車種並ぶこととなる。
これまで、他社に比べて力不足が懸念されていた、Cセグメント(編注:プリウスなどと同等のサイズ)SUVを強化し、全方位に抜かりはない。カローラクロスの投入で、トヨタのSUV戦略は完成したように思えるが、どうなのだろうか。トヨタがカローラクロス投入に込めた願いや、その狙いを考えていく。
文/佐々木亘、写真/TOYOTA
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■SUVラインアップを細分化するトヨタの補強戦略
SUVが人気カテゴリーになると、トヨタは続々とラインナップを強化してきた。Bセグメントにライズ・ヤリスクロス、CセグメントにC-HR、DセグメントにはRAV4・ハリアーを据える。さらにクロカン系にはハイラックス・ランドクルーザープラド・ランドクルーザー300と盤石の布陣だ。
心配事があるとすれば、Cセグで活躍していたC-HRがモデル末期に入っていることだろう。最盛期の人気はなくなり、替わりにライズ・ヤリスクロス・RAV4が、CセグSUVのユーザーを誘引している。
カローラクロスの投入には、弱点のCセグSUV補強と同時に、すでにバリバリの活躍を見せる各車に、自分の持ち場でしっかりと戦ってもらいたいという、トヨタの戦略を感じる。
トヨタは、SUVに求められる「機能性」と「スペシャリティ感」の2大要素を軸に、B・C・Dの各セグメントにエース車を配置した。
機能性ではライズ・カローラクロス・RAV4、対してスペシャリティにはヤリスクロス・C-HR・ハリアーだ。SUVカテゴリーを6分割することで、他メーカーに対しての弱点を見つけることができ、ターゲットユーザーを絞り込めるので、改良のしやすさへもつながっていく。
カローラクロスの投入には、今の1車種ではなく、未来の全体像を意識した、トヨタの長期的戦略が感じられる。
■「売れる」ヴェゼルと「売りやすい」カローラクロス
2021年7月の乗用車ブランド通称名別順位で、SUV最上位にいるのはホンダのヴェゼル(7573台)だ。最も売れているSUVはヤリスクロス(1万970台)だが、ヴェゼルも好調に販売を積み上げている。
Bセグに位置するヴェゼルだが、新型になりCセグにも負けない居住性や質感の高さを見せる。旧型よりも広いストライクゾーンを設定し、ワンクラス上のユーザーまで取り込もうと考えているようだ。
カローラクロスは対照的に、トヨタの中で宙に浮いているユーザーへ向けた、決め打ち感が強い。ライズでは小さく、RAV4では大きすぎる、でもC-HRは好みじゃない、そんなユーザーの狭いストライクゾーンへズバっと決まるクルマである。
どちらの戦略も間違いではないが、販売現場が扱いやすいのはカローラクロスの方だろう。販売ターゲットが明確だからだ。
オールマイティなSUVは、売り方を間違うと、どの層からも中途半端に映る危険がある。これは筆者がレクサス店で経験してきた。
初代のレクサス RXやNXのように、ラインナップの関係上、ターゲットを広くとらなければならない車種はタイマン対決に弱い。ユーザーがライバル車と迷い、どちらにしようかと考えているときに、明確な最後の一押しがしにくいのだ。
レクサスでは、UXが登場してから、NXとRXのキャラクターが明確になり、圧倒的にSUVの販売がしやすくなったと思う。
ヴェゼルに対して、明確なライバルを登場させなかったトヨタ。しかし、カローラクロス・ヤリスクロス・ライズ・C-HRが4方向から牽制する。ヴェゼルを筆頭とした、他社のSUVに対し、チームとして機能する体制をトヨタは作り出したのだろう。
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