「軽バン」なぜ大合併? 褪せぬ最強の実用性と転機迎える働く車の新事情

迫る電動化への対応 過渡期迎えた日本独自の軽バン

EVの軽バンとしては三菱のミニキャブミーブが発売されている(全長3395×全幅1475×全高1915mm)
EVの軽バンとしては三菱のミニキャブミーブが発売されている(全長3395×全幅1475×全高1915mm)

 そして今後必要とされるのが、ハイブリッドや電気自動車への対応だ。軽乗用車にも当てはまる話だが、軽商用車もビジネスを支える一種のライフラインになっている。低価格で購入して、少ない維持費で所有できる軽商用車があるからこそ、仕事を続けられるユーザーも多い。

 そのためには、価格が35万円以上高まるストロングハイブリッド、補助金を加味しても50万円以上の上乗せになる電気自動車では、軽商用車のニーズをカバーできない。

税金を高めずにエンジン排気量を800cc前後に最適化するといった規格変更もおこない、軽商用車のハイブリッドを含めた電動化と、2030年度燃費基準に対応する必要がある。ユーザーを困窮させない新車価格を具体的にいえば、現状と比較して、20万円の上乗せが限界だろう。

 先ごろトヨタでは、電気自動車の開発に際して、電池単体でコストを30%以上低減する方針を打ち出した。軽商用車のニーズに応えながら、電動化を達成するためにも、電池を中心とした今後の合理的な開発と生産コストの低減が重要になる。

 そこを乗り越えられると、軽商用車と電動化の親和性は良好だ。特にエブリイのようなワンボックスに近いボディを備えた後輪駆動車では、平らな床の下には空間がある。そこに駆動用リチウムイオン電池や制御機能を搭載できる。

 最近発売された電気自動車やプラグインハイブリッド車を見ると、海外の商品を含めてSUVが多い。これもルーフが高く、床下に駆動用電池を搭載する空間を生み出しやすいからだ。三菱 ミニキャブミーブも、軽商用車規格の電気自動車で、モーター、駆動用電池、制御機能をすべで平らな床の下に収めていた。

 軽商用車の電気自動車は、街中の配達などを中心に使われるので、1回の充電で走行可能な航続可能距離が短くても許容されることが多い。事業所などに戻る度に充電すれば、走行を続けられる。そして軽自動車のサイズなら、混雑した街中や駐車場でも運転しやすい。

 そして、街中で使う場合、走行段階で排出ガスを発生させず、ノイズが小さいことも大きなメリットになる。排出ガスを発生させなければ、倉庫内の移動も気兼ねなく行える。このように軽商用車と電気自動車のメカニズムは、相性が抜群に良い。

 軽商用車(軽トラックを含む)の届け出台数は、日本で新車として販売される商用車の約半数を占める。日本の物流にとって不可欠の存在だから、電動化や燃費基準への対応に際しても、経済性を含めて軽商用車を尊重する必要がある。

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