■キックス、ヤリスクロス、ヴェゼルと比較しても遜色ないどころか、むしろ良い!?
キックスe-POWERは車両本体価格は276万円からと、やや高めの設定となる日産キックス。武器は、1.2リッター3気筒ガソリンエンジンを発電機としたモーター駆動のe-POWERによる、圧倒的な動力性能だ。
低速域からのパワフルさ(最大トルク260Nm)は実に頼もしく、「胸のすくような加速」を味わうことができる。また、きびきびとしたステアリング特性に仕立ててあるため、コーナリング時のハンドル角がビシッと決まりやすく、運転操作が楽しめるのも魅力だ。
ただし、標準搭載のプロパイロットは「1.0」という1世代ほど昔のもので、ナビリンク機能(高速道路上でコーナーに差し掛かった際、車速を適切に調節してくれる機能)はない。また、ガソリン仕様がないために、廉価グレードを求めるユーザーには手を出しにくく、更には4WDの設定もないことが弱点でもある。
ロッキー/ライズのハイブリッドが211万6000円で出たことで、「e-POWERは高いシステム」という言い訳は通用しなくなった。本来は、日産にこそ、この手のマイクロSUVのシリーズハイブリッドを出してほしかったところであり、残念だ。
ヤリスクロスの長所・短所を分析するとき、必ずと言ってよいほどに、「コスパのよさ」を紹介してきた。だがそれは、ロッキー/ライズを除いた場合だ。それほど、ロッキー/ライズが異次元の価格で販売されている。
ただ、ヤリスクロスも十分に安い。ガソリン仕様は税込189.6万円(X/2WD)~、ハイブリッド仕様でも228.4万円(ハイブリッドX/2WD)~と、他メーカーのSUVよりも、1ランク以上は価格が安い。
コンパクトサイズ故の軽量なボディや、50mmトレッドが広い欧州版ヤリスのリアサスの採用など、走りの素性が良く、卓越したハンドリングも持ち合わせている。1.5LのNAガソリンと1.5Lハイブリッド、それぞれにFFと4WDを設定するなど、日本の降雪地域の需要にも、しっかりと応えている。
ヤリスクロスは、キックスやヴェゼルよりも、後席スペースが狭いことが弱点だ。ヤリスよりはまだましだが、荷室エリアも必要最小限ということは覚悟した方が良い。
ちょっとの旅行であれば問題ないが、キャンプ道具一式を満載していくにはちょっと無理があり、「SUV」としての用途に向いているとは言えず、荷室だけならば、ロッキー/ライズのほうが広く感じるくらいだ。
走りのシッカリした感触は、ヤリスクロスのほうになるだろうが、普段の使い勝手はロッキー/ライズのほうが上回るだろう。
2021年4月にフルモデルチェンジを受けたヴェゼル。このヴェゼルの最大の魅力は、やはり「パッケージングのよさ」だ。ホンダの得意とする、センタータンク方式と、後席のダイブダウン機構によって、フラットで広大な荷室を実現。このパッケージングのよさからくる、優れた使い勝手と居住性は、ヴェゼルの最大の魅力だ。
パワートレインもe:HEV の他に、1.5Lガソリンもあり、さらには2WDと4WDも設定されており、いずれも走行性能にもぬかりはない。
車両価格は、ガソリン仕様は227.9万円(G/2WD)~、ハイブリッド仕様は265.8万円(e:HEV X/2WD)~であり、BセグのコンパクトSUVとしてみれば、十分に安いといえる。
運転感覚がナチュラルで、優れたクルマに進化した新型ヴェゼルだが、先代ヴェゼルが持っていた若々しくキビキビしたフィーリングが抜け、全体的に丸められた印象となってしまった。
その点、ロッキー/ライズは、車体の軽さを活かした身のこなしの良さと、やんちゃにも感じるエンジンセッティングによって、かつてのホンダ製コンパクトカーが持っていた「元気な走り」に近い走りをする。もしかすると、ホンダ好きの方には、ロッキー/ライズのほうが合うかもしれない。
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